国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.04.09 ━
 器としての李さんのおうちは、家族5人が暮らすにしては、けっして広くありませんし、つくりもわたしたちのまわりにある多くの集合住宅とさして違いません。 なんの変哲もない普通のおうちなのです。でも、なかにあふれたもののひとつひとつは強烈に自己主張し、そこが李さん一家のおうちにほかならないことを示しています。ものと渾然一体となった小宇宙、李さんのおうちを歩きまわると、ちょっと疲れるかもしれません。でもだいじょうぶ。疲れても平気なわけは、こりゃこりゃ 探検隊レポートで教えてくれます。こりゃKOREA第5号をお届けします!
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 5号目次
   │
   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-6
   │  楽しいかもしれない...
   │
   ◇─お知らせ:イベント情報等
   │
   ◇─こりゃこりゃ探検隊
   │  レストランみんぱく「ソウルスタイル」期間限定特別メニュー
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 6
      楽しいかもしれない...
小寺多佳(こでら たか)
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 『楽しいかもしれない... 』などと本気で思えたのは、やっとすべての終わりが見えたころだったかな。

 3000数点の写真に名前をのせて、それをさらに、部屋に物を置くように、パソコンの中で配置してゆく。例えば、キッチンにある冷蔵庫の冷蔵室の中のキムチとか、アボジとオモニの部屋の衣装箪笥の中の宝石箱に保管してある結婚指輪というふうに。写真はちゃんと物になってあるべきところへ... 。そしてすべての物には、買ったのであれば、いつ、どこで、どんな理由で、もらったのであれば、誰から、どんな理由があって、などなどのエピソードをそえる。良く考えなくても、物が3000数点あれば作業は2倍にも3倍にもなることがわかりそうなものなのに、『大丈夫。やります。なんとかなるでしょ』なんて、馬鹿だった。『やばい!終らないかもしれない!』と、焦りはじめたころにはもうほうりだせなくなっていた。やらねば... やりますとも!

 開き直ってみたものの、時には、周りにも同じように、いや、私以上に忙しくしている人たちがごろごろしているというのに、不安のあまり『駄目だ!終る気がしない!』などと、誰かれかまわず愚痴ってしまった。今までにも時間に追われることが何度かあったけれど、実は時間の配分なんて深く考えたことがなかったんだな... 。3000数点だなんて、想像の範疇をとうに超えていた。

 作業に人の手を借りることができるようになって、やっと、一歩下がって全体を見る、という余裕がでてきた。そう、『楽しいかもしれない... 』と思える余裕が... 。エピソードを読んで笑ってしまうような... 。ただこなすばかりで少し苦だった作業も、いつか、楽しい、面白いと思えるようになっていた。それは、そのまま、マルチメディアコンテンツの良さなのだと言えるんじゃないかな。『楽しいかもしれない... 』、その言葉の後にはかならず、『もっと時間があれば... 』と、続いていたことが少し残念ではあるけれど... 。けっして妥協のなかった完璧なものではないから... 。それでも『終ったぁ!』と、手を挙げて喜んでしまう私。周りの人たちをまきこんでパニックになっていたのに勝手なものだ。愚痴を聞いてくれた方には、仕事の手を止めてしまったりと、御迷惑をおかけしたと思ってます。こんな場でなんだけれど、ごめんなさい。そしてそして、手を借してくださった方たちには、深く感謝しています。ありがとうございました。ひとりでは、きっと終らなかった。

 特別展『2002年 ソウルスタイル』に携わることができて良かったと思っています。これは面白い。そんな一言を聞くことができた... 。それがどんなに嬉しいことか.... 。特別展はまだ始まったばかり。もっと『嬉しい』を感じられる、それを願うばかりです。
(エスパ)
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  ● お知らせ

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       ☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event
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    ★5月19日(日)仮面劇
   http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event_01#04
     ☆14:30~16:00 韓民族の風刺 固城五大広大台戯仮面の宴
      【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
                  ※参加無料・申込み不要
  
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    ■□■□■特別展示館地下「みんぱくシヂャン(市場)」■□■□■
    □■□■□民博の前庭  「みんぱくマダン (広場)」□■□■□

     シヂャン……「韓国の食」、「日本の韓国食」コーナーなど
           韓国『食の世界』を展示します。
           土・日・祝日に韓国食の出店、販売を行っています。

     マダン………毎週日曜日の1時からと3時からの2回、
           安聖民さんのパンソリ公演をおこなっています。

      あなたが主役です。みんぱくマダンで韓国芸能を公演したい
      方は、ソウルスタイル係までお申し込みください。
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        シヂャン、マダンのお問い合わせ・お申し込み
             みんぱくソウルスタイル係
         TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247
           E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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   ┌───新聞・雑誌で「ソウルスタイル」が紹介されました!───┐

     『News Week』April 8/April 15, 2002 P80
               "Seeing How the Other Half Lives"
     民団新聞3月27日(水)「家族の暮らしを紹介」
     The Japan Times 4月2日(火)
               "Museum displays home articles
                of 'typical' family from Seoul"
     毎日中学生新聞4月3日(水)「韓国人一家の暮らしを再現」
     統一日報4月3日(水)「韓国の暮らし丸ごと再現」

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      ☆特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」
      【会期:3月21日(木)~7月16日(火)】
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index
      ★国立民族学博物館のホームページ:みんぱくウェブサイト
       http://www.minpaku.ac.jp/
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   ̄ ̄ ̄こりゃこりゃ探検隊 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       レストランみんぱく「ソウルスタイル」期間限定特別メニュー
        http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/24
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   展示場には、キムチのにおいがただよっています。どこから?展示場の李
  さんのおうちの、戸棚や冷蔵庫をのぞいてみてください。わたしはこのなや
  ましいかおりに食欲を刺激され、李さん一家のパワーに圧倒されてしまいま
  した。

   頭の中は展示でいっぱいだ、なのにおなかはからっぽだ、これはなにか食
  べて帰らずにはいられない、とお思いの方のために、特別展示館おとなりの
  レストランみんぱくをご紹介します。

   レストランでは、宮廷料理のサムゲタン、家庭料理のピビンバ、パジョン
  が期間限定でメニューに加わりました。「ソウルスタイル」の期間中だけ!
  「ソウルスタイル」を見たあとは、おなかのなかもソウルスタイルにしちゃ
  いましょう!
                   鈴木わかえ(こりゃこりゃ探検隊員)

  ┏━参鶏湯(サムゲタン)3,800円[二人前]━━━━━━━━━━━━━━━
               http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/25
    風邪を引いたときなどにも食べられる、体にやさしい、滋養のある料理で
   す。辛くなく、あっさりしています。丸鶏一羽にもち米、高麗にんじん、栗、
   にんにく、なつめなどをつめて、じっくり煮込んいるので、骨まで柔らかく
   なっています。(でも骨は食べないでね!)塩コショウとねぎの薬味で味付
   けをしていただきます。わかめスープ、もやしご飯、キムチつき。シェフの
   お薦めメニューです。

  ┏━ピビンバ 1,300円━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
               http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/26
    3つの特別メニューの中でも一番人気のピビンパは、ボリュームたっぷり。
   ひき肉、ぜんまい、ほうれん草、にんじん、たまごがもやしご飯の上にのっ
   ています。味の決め手はコチュジャン。混ぜ混ぜするのも楽しみの一つです。
   ひとまわり小さなピビンバにドリンクがついたレディースセットもあります。

  ┏━パジョン(韓国風お好み焼き) 900円━━━━━━━━━━━━━━━━
               http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/27
    いか、あさり、さくらえびなど、具がたっぷりの海鮮パジョンは、さっく
   りふんわりしています。卵に小麦粉を混ぜるのではなく、具に小麦粉をまぶ
   したものを、焼く直前に卵と混ぜ合わせることで、重くならず、香ばしい焼
   き上がりになるそうです。レストラン特製の甘辛いたれをつけて召し上がれ。

    ⊂おまけ⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂⊂

       家庭で簡単に作れるパジョンのレシピを、井戸木博シェフに
      こっそり教えていただきました!

      材料─青ねぎ1束・いか50g・むきえび50g・小麦粉50g・卵2個
         塩少々

      1.青ねぎは4cmに切る。いかとむきえびは洗って水切りし、
        小さく切って、さっと下ゆでしておく。

      2.卵をよくといて、小麦粉、塩を加え、そこへ青ねぎ、いか、
        むきえびを入れてよくまぜる。

      3.フライパンをよく熱してごま油をたっぷりひく。

      4.中火にし、たねをのばしてきつね色に焼きあげる。

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   お問い合わせは…    レストランみんぱく tel:06-4864-6605
               ※団体・パーティーの予約も受けつけています
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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 前号でもご紹介した李家をしゃぶりつくすマルチメディア作品をじっさいにデザインし、作品に仕上げてくれたのがエスパの小寺さんです。家のなかのどこに何があるかを全部知っている。。。李さんと面識もないのに、そう言ってのける小寺さんのような李家フリークが(3千数百点のガラクタと格闘したあげく)、じつはあちこちにあらわれて、この特別展をささえてくれているのです。おそるべしソウルスタイル!!

 マルチメディア作品のなかには、「家族をかたる」というページがあります。家族のそれぞれが自己紹介をするだけでなく、他の家族を紹介する。ハルモニは息子や嫁のことをどうおもっているのか、オモニは姑や夫のことをどう見ているのか、展示場にはながれていない興味ぶかいインタビューですよ。もちろん、ウィジョンの一日を追いかけてみたり、夫婦の寝室にある物をしらべてみたり、これだけであなたも間違いなく李家フリークになれる!
 このマルチメディア作品は特別展の情報コーナーと常設展示場のビデオテークで公開されています。

 ところで、、、小寺さんゴメンナサイm(__)m いつまでたってもチェック済みのデータを手放せずにいたのは、図録の仕事まで同時進行していたからでし た。なんたって3200件! その図録の顛末は次号で。

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 1階展示場に説明のない展示ケースが5つあったことにお気づきの人もいるでしょう。李さん一家5人が来日されたとき、いそがしいスケジュールの合間 をぬって、それぞれ一番たいせつな物をケースにおさめてもらいました。

 アボジがえらんだのは族譜。それが私たち家族のアイデンティティだからという選択理由にも、男社会を肩肘張って生きるアボジらしさが発揮されていました。ハルモニが迷わずえらんだのは、祭祀のさいにアボジが着る手作りのドポ(礼服)で、これも伝統的価値観をおもんじるハルモニならでは。子供たちは、それぞれいわくつきの本を選択しましたが、どうやらこれはオモニの入れ知恵があったもよう。肝心のオモニは、音楽雑誌記者をしていたころに蒐集したレコードにしようか、それとも趣味であつめている人形にしようかと迷いに迷ったすえ、祭祀にもちいる漆器のセットを選択しました。

 今回の特別展は、家族のためにこつこつと物をあつめてきたオモニの蒐集癖と無私の協力のたまもの。この韓国展示の衝撃は、建て前の世界ではなく(さんざん見飽きたでしょう?)、ふだんは隠れている女社会の本音が目のまえにつきだされたことにあります。
 マイクを向けられたアボジが伝統文化のたいせつさを説き、韓日文化交流の意義を唱えるほど、アボジのはいたパンツのキングコングが光りをはなつという寸法です。

 だから、オモニはもっと素直に自分の世界を表現するとおもっていたのですが、オモニがえらんだのは理想の主婦像を演じること。そうすることが、オモニにとってもっともたいせつな家族の和をまもる道だと、聡明なオモニは心得ていたのでしょう。祭器にふれると祖先に対面する気分にさせてくれる。そうオモニは解説にしるしています。

 行間を読むという言葉がありますが、文化の理解もそれと似たようなところがあります。空白だった5つの解説パネルが、ようやく展示場にお目見えしました。

 こりゃこりゃ探検隊第1回のレポートはみんぱくレストランから。野蛮人と呼ばれるかもしれない、と気にしながらサムゲタンを骨までしゃぶりつくして しまう隊員一同なのでありました(^^ゞ
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     ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
    発行しています。
    http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)
      E-News配信解除: http://www.mag2.com/m/0000086722.htm
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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