Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』
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Seoul Style 2002 : E-News 『 こりゃKOREA!』 http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.04.16 ━
大勢のひとでにぎわうある日の李さんのおうち。李さん夫婦の寝室では、ひとりのかたが鏡台の前でうろうろしています。肩越しにそっとうかがっていると、どうも鏡台の引出しを開けようか開けまいかと躊躇しているご様子。。。そこ開けなきゃ!!! なにかをかたるものがどの引出しのなかにも、どんな隅っこにもあふれている展示が奇跡を感じさせると評判のソウルスタイルから、こりゃKOREA第6号をお届けします!
清水郁郎(副編集長)
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こりゃKOREA! 6号目次
│ ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-7 │ もうひとつの博物館 │ ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-8 │ 図録=ものは何かを語れたか │ ◇─お知らせ:イベント情報等 │ ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信
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● 2002年ソウルスタイル ここだけの話 - 7
もうひとつの博物館
河村岳志(かわむら たけし)
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ソウルスタイルの図録アートディレクション・デザインを担当しました。通常、図録と言いますと展示物の写真・補足の図版・文章でわりとゆったりとしたものを想像します。しかし、今回初めて民博の図録に関わる事になり、打ち合わせをした時には、あらかじめイメージしていたものと全く異なることが分かったのです。一に要素の多さ。二にハングルとのバイリンガルになること。三にこの展覧会のコンセプトの理解。
一つ目は、膨大な要素をどのように情報として整理分類するか。これは先生方と編集の方々の功労であります。 二つ目は、MacOSにハングル・ランゲージキットをインストールし、ハングルフォントを購入することで達成。MacOSやWindows2000,XPのシステムにそのような機能があり、追加インストール等することでハングル表示が可能になります。当然ハングル以外にも様々な言語があります。それにより、Webを見る場合でも文字バケせずに、元言語(文字)で表示が可能になります。理解が出来なくてもオリジナルの状態で見ることの視覚的な意味?があると思います。ぜひ皆さんやってみてください。書体を問わなければ、システムに表示フォントも付いてますので表示は可能です。 で、三つ目の展覧会のコンセプトです。最初は、この家族は平均的な家族なのか?普通の家庭?他の韓国人なら?など、必ず聞かれる疑問と同じことを思いましたが、やはり平均的な、などというのがステレオタイプな思考であって、何かを接点として掘り下げていくことにより公約数的な、または背景が見えてくるのであると理解しました。これは自分の体験を思い返しても分かることで、たったひとつの家族とともに過ごすと、その家族を通じて様々な背景や公約数が見えてきます。感じてきます。特に感じることが大切です。知ることから分かることの大切さです。解釈は人それぞれで良いのです。そういう体験のバーチャル版が今回の展示なのではないかと思いました。 だから、その部分を本というもう一つの箱のなかに如何に展開するのか、李さん一家の調査材や光景、背景、歴史を、様々な視点、読み方ができる本にならないか? 最初、雑誌やガイドブックのようなアプローチでデザインしようとしました。美術ではないので、美しく整った物の見せ方ではなく、感じるためのバーチャルな展示の延長でありながら補完するものとして、結果お洒落な調査報告書としていろんな読み方のできる本になるように考えました。 ですから、表紙は注目や興味をそそる様な、広告、販促的な表現を避けたのです。なにせある意味で超プライベート本だからです。デザインで面白くも美しくも物事を見せる事が可能です。そのようなエフェクトを一切与えず、素直に見せながらも美しい本になればと考えました。 しかし、美しくまとめるだけではなく凝れば凝るほど大変になります。関連性が増すからです。やれるだけの事はやれたかな?と思っています。 では、レイアウトとオペレーションを担当した松山に話しの続きをゆずるとしましょう。
(オルタ・デザインアソシエイツ)
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● 2002年ソウルスタイル ここだけの話 - 8
図録=ものは何かを語れたか
松山由香里(まつやま ゆかり)
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ある韓国人一家の3LDKの部屋をまるごと展示する。今回の特別展のコンセプトを初めてうかがった時、「なんだか面白そう」と、展示そのものにおおいに興味を覚えました。そしてこのような仕事に関われることをうれしく思いました。
ところが、いざ制作に入り、そこに収まるはずのビジュアルをイメージするうちに、一体この本をどう組み立てたらいいんだろうと迷いに迷い始めてしまったのです。手元にあるのは、李家の生活用品を1点1点デジタルカメラで撮影した膨大な数の写真データ、調査資料として撮影された家の内部などの写真、家族5人それぞれの着衣から持ち物をスタジオで撮影したもの。後から届く予定の、家族の暮らしぶりを現地のカメラマンが撮影した写真。 まずはその物理的な量の多さ、それに伴うであろう膨大な作業量に押しつぶされそうになりました。が、なによりも重くのしかかった問題は、このままでは、「韓国のある一家の記念写真集」になってしまう! この本を特別展の図録として成立させるにはどうしたらよいのか、ということでした。 編集者の方々と打ち合わせを繰り返し、台割が作られ、構成要素が決まり、次第に本としての形をおびていく一方で、頭の中はまだ迷走し続けていました。 展示会の準備が、李さん一家の荷物の引っ越しという大詰めを迎えた頃、図録の方は、もう印刷所への入稿が目前に迫っていました。テキストや写真、内容の変更の指示、何もかもが一気に流れ出し、作業に追われ、時間との闘いの日々が始まっていました。そんな段階になってようやく、この本に足りないものが見え始めたのです。これが「韓国のある一家の記念写真集」に終わるか特別展の図録になりうるかの境目のようなもの。 具体的には今あるものにちょっとした味付けを加えていく、それだけのことでしたが、結果として図録の中にこの展示の本質を伝える何かを盛り込むことができたのではないかと思っています。 オープニング・セレモニーで、李さん一家が会場に現れた時、身近な誰かよりずっとずっとよく知っている人たちがそこにいました。図録を通してしか彼らのことは知りません。つまりは彼らの身の回りのものを介して彼らを知っているにすぎないのです。しかし、目の前の李家の人たちを見て受けた印象は、まぎれもなく図録の中の李さん一家そのものだったのです。 最後の最後まで、そのあり方を問い続けながらでき上がった図録。「ものはなにかをかたる」のだと実感した瞬間、本が完成してもまだなおどこかに迷いを抱えていた自分の中に、フーッと風が吹いたような……そんな気がしました。
(オルタ・デザインアソシエイツ)
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● お知らせ
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☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆ http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event ┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘ ★5月19日(日)仮面劇 http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event_01#04 ☆14:30~16:00 韓民族の風刺 固城五大広大台戯仮面の宴 【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】 ※参加無料・申込み不要
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■□■□■特別展示館地下「みんぱくシヂャン(市場)」■□■□■
□■□■□民博の前庭 「みんぱくマダン (広場)」□■□■□ シヂャン……「韓国の食」、「日本の韓国食」コーナーなど 韓国『食の世界』を展示します。 土・日・祝日に韓国食の出店、販売を行っています。 マダン………毎週日曜日の1時からと3時からの2回、 安聖民さんのパンソリ公演をおこなっています。 あなたが主役です。みんぱくマダンで韓国芸能を公演したい 方は、ソウルスタイル係までお申し込みください。
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シヂャン、マダンのお問い合わせ・お申し込み
みんぱくソウルスタイル係 TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247 E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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┌───新聞・雑誌で「ソウルスタイル」が紹介されました!───┐
讀賣新聞4月6日(土)「韓国の伝統芸能楽しみませんか」 産経新聞4月10日(水)「韓国の暮らしの素顔」 日本経済新聞(夕刊)4月11日(木) 「家族が語る等身大の韓国」 └──────────────────────────────┘
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☆特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」
【会期:3月21日(木)~7月16日(火)】 http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index ★国立民族学博物館のホームページ:みんぱくウェブサイト http://www.minpaku.ac.jp/
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■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 展示の対象は目にみえない家族、しかも、展示される家財道具類は搬入する直前までじっさいに現地で使っているものばかり。ふつうの展示とはかけはなれた状況で図録の編集はスタートしました。 昨年6月の時点であがってきた表紙案は10点、もちろん現在のものはありません。内容の骨子はこのときすでにかたまっていたのです。展示のコンセプトや素材を提供する研究者、それらをひとつの本として構成する編集者、そして、そのイメージを実在化させてゆくデザイナー、この3者のキャッチボールで図録はできあがります。図録の内容が、家族紹介から展示の核心に踏み出したきっかけは昨年末、調査資料およそ3200点をすべて盛りこもうと決めたときです。投げ合うボールはしだいにヒートアップしてゆきました。 ソウルスタイルの図録を手にとって、その内容の濃さとデザイン密度のたかさに驚嘆した方もおおいでしょう。かつてどこにもあったためしのない展示図録は、オルタ・デザインアソシエイツの河村岳志さんのもとで誕生しました。寸部のスキもないデザインに仕上げてくれたのは小島奈津子さんと松山由香里さんです。 展示は大きな事件のようなものです。李さん一家にとってそうだっただけでなく、それがなければけっして出会わなかったであろう人間同士が、それぞれの仕方でこの事件とむきあう。事件の当事者にとってのもうひとつのソウルスタイルをえがいてゆくことがこの連載のテーマでもあります。まさに家族を事件とみなそうとしてきた展示のコンセプトそのままに!
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