国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.05.02 ━

  ひとつひとつはどことなく見なれたものばかり。うなるほど迫力あるものはありません。それが李さん一家の持ち物。でも、そんなものたちがまとまると圧倒されるほど迫力があります。
 スーツケースをあけたとたんに少年少女はどんな表情をみせるのか!?今からたいへん気になってしかたがない人が急増中の「韓国パック」がもうすぐ登場!!ますます好調な「ソウルスタイル」から、こりゃKOREA第7号をお届けします。
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 7号目次
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-9
   │   「みんぱっく」ってなんだ?
   │
   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-10
   │   韓国パックができるまで
   │
   ◇─お知らせ:イベント情報等
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 9

      「みんぱっく」ってなんだ?
北村 彰(きたむら あきら)
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 一昨年のある日、民博のN先生から貸し出しキットについての相談を受けました。いま、民博では学校を対象に資料の貸し出しを行っているが、いったいなにがどう使われているのか、さっぱりわからない。また貸し出すとなくなったり壊れたりして戻ってくる。それならいっそ借り手が何を欲しているのかを調べて、予め貸し出し専用のパックにしておけばいいのではないか、、、私の会社は博物館などの展示づくりのプロダクションなので、貸し出しキットのような教材づくりの経験はなかったのですが、とにかく手探りで開発のお手伝いをすることになりました。

 まずは学校の先生のところへお邪魔して、総合学習へ向けてどんなものがあれば役に立つのかを聞いて回ったのですが、結論は、学校の先生も「やってみないとわからない」ということでした。そこで、N先生はじめ民博の研究者の方々と学校の教科書を眺めながら、まずは民族衣装からはじめるか、ということで、「みんぱっく(仮称、以下省略)」のプロジェクトがはじまりました。学校の先生がたのアンケートでも、民族衣装、楽器、食事に関する要望が一番多かったのです。でも、いざ貸し出し用に何を詰めるかとなると、担当の研究者の個性がどんどん出てきて、ふと気が付くと「これが衣装キット??」という代物になっています。でも、その「異文化の固まり」具合がとてもいい感じなのです。

 現在も開発中の「みんぱっく」は、「持ち運びできる小さな博物館」というのがコンセプトです。つまり、利用者はわざわざ民博に行かなくても、好きなときに好きなだけ「みんぱっく」というコンパクトな博物館を利用することができるように工夫されています。遠足の1時間ではあまり理解できなかった民博の展示が、自分たちの教室で、手にとって、納得いくまで見学することができるはずです。もちろん「みんぱっく」には、研究対象になるような貴重な資料は入れられませんから、そのような資料は民博へ見に行かなくてはなりません。しかし教材用とはいっても、民博の研究者の先生がたが「こどもたちに見せてあげたい」と真剣に選んで詰め込んだ立派な「展示物」ですから、民博へ来れなくても充分、民博の展示(のエッセンス)を堪能できるはずです。解説も、こどもたちに語りかけるようにわかりやすく書かれています。

 たとえば、いよいよ試験運用が始まる「韓国パック」では「こどもたちの一日」というテーマで、李さんちのこどもたちがふだん学校へ持っていく持ち物や道具などを入れようということになりました。通学リュックは担げるし、中身を取り出してさわることもできます。ウィジョンやドンファの使ってた本物じゃないけれど、民博の先生が彼らに頼んで買ってきてもらったものです。学校の授業で用いられる教材の楽器や仮面、民族衣装から、ちょっと変わった給食のグッズまで、こどもたちの身の回りの品々がたくさんはいっています。それで、本物が見たくなったら特別展「2002年ソウルスタル」を見に行きましょう。ウィジョンやドンファの使ってた本物が展示されているだけじゃなく、自宅の子ども部屋から学校の教室まで再現されていて、まるで李さんちに泊めてもらったみたいに彼らの生活を体験できます!

 「みんぱっく」は、あまり難しく考えると使いこなせませんが、自由に楽しもうと思えば、いくらでも発見ができる「実物」の魅力に満ちています。担当した民博の先生がたは意図を持って「小さな博物館」に詰め込んでいますが、利用者はそんな意図など無視して自由に楽しんでも、いっこうに構わないと思います。「韓国パック」のなかの「筆箱」に興味を持ったら、それが自分の筆箱となにが違って、なにが同じか・・・いろんな筆箱を調べてみれば、誰も気づかなかった秘密にどり着けるかも知れません。発見を発展させるのは、「韓国パック」を借りたこどもたちと、その支援者の先生次第なのです。もちろん、調べ学習を手助けする補助資料もたくさん入っています。何たって「調べ学習のプロ」の研究者が詰めているのですから。いろんな使われ方をした「学習事例」の記録もパックに追加されていくので、「みんぱっく」は利用者が発信し、増殖する学習パックでもあるわけです。

 ひょっとすると博物館の展示も、もっと自由に楽しんでも構わないのかも。ハンズ・オン(さわっていい)展示で、「これはこのようにして使います。さあ、あなたもやってみましょう!」と書くよりも、「これはなんだと思う?あなたならどうやって使う?よくみてわさって考えてみて!」と書けば、同じ展示物でも受取り手が主体となるのです。あなたも「韓国パック」で、自由で新しい学びの発見を楽しんでみませんか?
(株式会社日展)

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 10

      韓国パックができるまで
永井希恵(ながい きえ)
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 現在開発中の学習キットに「韓国パック」がデビューします。「今回の特展とからめてテーマを設定しよう!」と「2002年ソウルスタイル」での活用を念頭におき、プランを練りました。ステレオタイプの韓国ではない、たまたまソウルに住むある一家のある暮らしをまるごと展示するというテーマをうけて、李さんの子どもたちに視点をおきました。「韓国パック」は、ウィジョンやドンファを通して「韓国(ソウル)の子どもの一日」が体験的に学べるパックにしようと考えたのです。  担当教官である朝倉先生や佐藤先生たちといっしょにスーツケースに何を詰めるか選んでいたときです。「布団をパックに入れたいね」という意見がとびだし、一瞬(えっ、ふっふとんですか?……)とひきつってしまいました。(どうやってパックするのか…)と。この学習キットには、一般のプログラム化された教材キットにはない特色がたくさんあります。その一つとして、各パックには担当教官の思い入れのあるモノがつまっているのです。担当教官のまなざしがモノという形になってつまっているのです。布団1枚から韓国のくらしのイメージや特色を理解することにつながるということで、パック入りが決定しました。後日、韓国から届けられた布団を目の前に途方に暮れていましたが、ひらめいたのが、通販でよくある「布団圧縮パック」! やってみると結構楽しいんです。みるみる布団が薄くなりスーツケースにも収まった。万歳! …そんないわく付きの布団や、ウィジョンやドンファがセレクトした通学グッズ、授業で用いる教材などが詰め込まれました。もちろんそれらにまつわる情報とともに。  今回の「韓国パック」には、日の目を見なかったもう一つの企画がまだ眠っています。それはソウルスタイル・ドールハウス。私のなかでは裏韓国パックと名付けていますが、「韓国(ソウル)の子どもの一年」をテーマに、その暮らしぶりがごっこ遊びで疑似体験できるミニチュア・ドールハウスです。韓国の今の暮らしに残っている四季折々の伝統行事に触れながら、衣食住を含めたトータルな情景をミニチュアで再現しようと考えました。ままごと遊びや着せ替えごっこを通して、日本との相違点を発見してもらえたらという企画でした。李さんのマンションの縮小版とともに、昔の韓国の住居の縮小版が比較ができるという、夢のように楽しい授業のイメージが膨らんだのです。そして全てのパックにミニチュアハウスが揃えば…… どんどん夢は膨らんだのですが、そんな予算はどこにもなかったのですね。そこで、着せ替え人形やドールハウスを作っている玩具メーカーのTさんにラブコールを送りアタックしたのですが、思いは届かず、いまだこの企画は夢の中だけ。
(株式会社日展)

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5月7日より小・中学校向け「韓国パック」の実験運用開始!!
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          ┃ 子どものための持ち運びできる ┃
          ┃ 小さな博物館「韓国パック」の ┃
          ┃ 貸し出しを、特別展「2002年ソ ┃
          ┃ ウルスタイル」の開催期間中お ┃
          ┃ こないます。         ┃
          ┃                ┃
          ┃                ┃
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         くわしくはホームページをご覧ください。
     http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/pack/
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  ● お知らせ

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       ☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event
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    ★5月19日(日)研究公演 14:30~16:00
     http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/slp/performance0205
     韓民族の風刺!固城五大広大台戯仮面の宴
     【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
                     ※参加無料・申込み不要

    ★チャンゴ演奏 出演:コッソンイ
     5月11日(土)13:00~(20分程度)
     5月19日(日)11:00~12:00の間(20分程度)
     【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
                     ※参加無料・申込み不要
  
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    ■□■□■特別展示館地下「みんぱくシヂャン(市場)」■□■□■
    □■□■□民博の前庭  「みんぱくマダン (広場)」□■□■□

     シヂャン……「韓国の食」、「日本の韓国食」コーナーなど
           韓国『食の世界』を展示します。
           土・日・祝日に韓国食の出店、販売を行っています。

     マダン………毎週日曜日(5月19日をのぞく)の1時からと
           3時からの2回、安聖民さんのパンソリ公演を
           おこなっています。
      ※雨天の場合は常設展1階エントランスホールで開催。
           
      あなたが主役です。みんぱくマダンで韓国芸能を公演したい
      方は、ソウルスタイル係までお申し込みください。
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        シヂャン、マダンのお問い合わせ・お申し込み
             みんぱくソウルスタイル係
         TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247
           E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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  ┌────新聞・雑誌で「ソウルスタイル」が紹介されました!────┐
    山陰新聞4月21日(日)「滴一滴」
    讀賣新聞4月25日(木)「今日のノート」
    NIKKEI DESIGN MAY 2002 p117
      「『2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし』
                     冷蔵庫から衣類まで大公開」
    不定期刊スタジオ・ポット[Webマガジン:ポット出版]
      デジタル時代の出版メディア・考 第11回
      「ソウルの書店は元気だった!」湯浅俊彦
      http://www.pot.co.jp/digitaljidai/11_20020318
    月刊みんぱく3月号[国立民族学博物館広報普及誌]
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/bookbite/gekkan/200204
      特別対談「ソウルの変貌」李 文雄・朝倉敏夫   〔P2~P7〕
    月刊みんぱく4月号[国立民族学博物館広報普及誌]
http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/bookbite/gekkan/200204
      特別対談「『ソウルスタイル』の挑戦」
                     都築響一・佐藤浩司〔P2~P7〕
      季刊民族学100号(2002年4月20日発行)[友の会機関誌]
    http://www.senri-f.or.jp/kikanshi/index
      「メイキング・オブ・2002年ソウルスタイル」
               朝倉敏夫 佐藤浩司 笹原亮二〔P40~P57〕

      ※友の会について、詳しくはこちらをご覧ください
       http://www.senri-f.or.jp/about_associates/index
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     ☆特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」
      【会期:3月21日(木)~7月16日(火)】
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index

      トドリのフィールド雑記
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/todori/
        現在の韓国の多様な側面を伝えるエッセー。随時掲載。

      韓国パック
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/pack/

     ★国立民族学博物館のホームページ:みんぱくウェブサイト
       http://www.minpaku.ac.jp/
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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 春休みがおわって、小中学生の団体が展示場を訪れるようになりました。一家5人がくらす部屋におしよせた子供たちは、目を輝かせて夫婦のダブルベッドにもぐりこみ、子供用の2段ベッドによじのぼります。子供たちが元気に立ち去ったあとには、無惨にずり落ちたままの乱れた布団と、投げ捨てられてころがるぬいぐるみがありました。

 千々に乱れるのは展示品ばかりではありません。そうやって「異文化」とやらに馴染んでいくのかもしれない、と納得したり。。。きっと自分の家ではきちんとしているのだろう。だとしたら、旅の恥はかきすてとばかり、異郷で傍若無人の振る舞いをする日本人イメージとあまり大差ないのかな、とおもったり。

 自分のたいせつにしていたピカチューのぬいぐるみがそんな扱いをうけていると知ったら、きっとウィジョンはかなしむでしょう。展示されているのはどこにでもあるガラクタかもしれません。だけど、その背後に自分とおなじ人間の息づかいを感じとってもらいたい。ただそれだけのささやかな願いがうまく伝えられなくて(展示の関係者にさえ)、私の心は乱れるのです。「個人」の「いま」を対象にできないなら、文化学も民族学もあまり魅力的な学問とはいえません。

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 みんぱく虎の穴の秘密兵器、開発名を「みんぱっく」という小中学校向けの貸し出しキットに韓国版「韓国パック」がお目見えします。実際の運用までには解決しなければならない問題も多いようですが、2002年ソウルスタイルの開催にちなんで、特別に「韓国ぱっく」の貸し出しをはじめます!!

 韓国パックの開発とパッケージ化にとりくんでくれたのは、日展の北村さんと永井さん、それにみんぱく研究員の佐藤優香さんです。佐藤優香さんによる韓国パック実験運用秘話は次号のおたのしみ~。

 親の顔がみたい!という現実にばかり目がいってしまう私とはちがって、子供たちの目の輝きが変わる一瞬、北村さん流に書くと、この禁断の果実を味わってしまった関係者のみなさんの熱意と努力は敬服にあたいします。ドンファとウィジョンにつきあってもらって、文房具のはいった大きな買い物袋をいくつもかかえてデパートからもちかえった苦労も報われるというものです。
 韓国版リカちゃんハウスの企画で私たちを仰天させてくれた永井さんからは、「この企画にのった!というスポンサー、共同開発に取り組んでくださる方は、ぜひご一報ください」というメッセージが寄せられています。
 人はパンのみにて生くるものにあらず。夢の実現にむかってすこしずつでも前進してゆきたいものですね。
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     ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
    発行しています。
      http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)

        E-News配信解除: http://www.mag2.com/m/0000086722.htm

      バックナンバー: http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/index
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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