国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.05.07 ━

 「韓国パック」ついに本日から貸し出し開始!!スーツケースの中のひとつひとつのものから少年少女がつむぎ出すファンタジー。新しい学びの場をつくりだすことに限りない情熱をかたむける佐藤優香さんが、子供たちと「韓国パック」のであいの様子を書いてくれました!G.W.が終わっても勢いは止まらない!ソウルスタイルからこりゃKOREA第8号をお届けします!
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 8号目次
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-11
   │   パワフルな学びのリソース「韓国パック」
   │
   ◇─お知らせ:イベント情報等
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 11

      パワフルな学びのリソース「韓国パック」
佐藤優香(さとう ゆうか)
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 チャイムがなって、子ども達が教室にはいってきた。きれいにならんで、わたしの前に体育座りした。このときのわたしとの距離はおよそ2メートルくらいだろうか。

「こんにちは!みんな、みんぱくって知ってますか?」。

 ちらほらと手が挙がる。小声で「遠足で行ったやん」とか「なんかいろいろなものがいっぱいあった」とかなんとか。まだ緊張しているのだろうか、反応は消極的だ。

「今日は、韓国の子どもたちが使っているものを持ってきました。最初に学校へ持っていくカバンを見てもらおうと思うのだけど、女の子のカバン見たい人いますか」と言うと女子が一斉に手を挙げた。「じゃぁ男の子のが見たい人」ときくと、今度は男子が手を挙げる。「どっちも見たい人」と言うと、また手が挙がる。みんな身をのりだしはじめた。

 さっき「みんぱくって知ってますか」と訪ねたときとは反応がまったく違う。わたしが子ども達の前に掲げているのは、日本でも普通に売っていそうなリュックサックにすぎないのに。
「女の子のリュックはこちらで、男の子のリュックはあちらで見ましょう。あとから交代して両方見ることができますからね。ではそれぞれに分かれて集まってください」。
と言ったとたん、女の子のリュックを持ったわたしのまわりに女子がどっとかけ寄った。それからは
「わたしが開けたい」
「見えないよー」
「何これー」
「かわいい」
「わぁ」
「見て見て」
「欲しいー」
と大騒ぎ。

「日本のと似てるね」
「韓国のふでばこのほうがいいよ」
「これは国語の教科書かな」
「牛乳飲むの?」
「ピカチュウのマスクだ」
「ノートがいいね」
「これっておはじきじゃない?」
と、韓国の小学生の世界にはいり込んでいく。

 ひとしきり見たり、さわったり、オシャベリしたりして、それでもまだまだリュックの中身に興味深々な子どもたちに、もとのように座ってもらった。次は、衣装や楽器や仮面を取り出す。各自好きずきにチョゴリを着たり太鼓をたたいたりしていたが、やがて誰かが歌をうたいはじめた。

~春にはすみれたんぽぽふでりんどう~
~三年峠はよいながめため息のでるほどよいながめ~

 「三年峠」の歌だ。チャンゴも歌もうまい。仮面をかぶることを恥ずかしがっていた子も、仮面をつけたまま自然と手足をうごかし、リズムにのって踊り始めた。教室中が大合唱になったとき、授業のおわりを告げるチャイムがなった。子ども達は先生に促されて最初のようにならんで座った。はじめより、ぐっと前に。わたしとの間は、数十センチにまで縮まっていた。

 「2002年ソウルスタイル」開催まであと2週間という3月のある日、ソウルの子どもの一日をテーマに、特別展のエッセンスをスーツケースにつめこんだ「韓国パック」を開発し運用するための調査をおこなった。行き先は、M市立M南小学校。
 調査といっても難しい顔をして子どもたちや先生方に「いかがですか?この使い心地」なんてきいてまわるわけではない。文字がずらりとならんだアンケートに答えてもらうわけでもない。多くの場合、授業を参観させてもらい、あとから先生方や子どもたちに話を聞く。今回は、子どもや先生方と一緒にモノにふれ、話をしながら、同時にその様子を見せてもらう。
 M南小学校3年生の子どもたちは、2学期から韓国のことを学んできている。「三年峠」という韓国の民話の劇を上演したり、そのために伝統的な楽器チャンゴを習ったり、暮らしにまつわるさまざまなことを調べてきたらしい。わたしたちにとっては「調査」でも、子ども達にとっては学びを深める「授業」の1コマだ。おそらく子どもにすれば、わたしは授業をする人でもなく、授業を見に来た人でもなく、いろんなモノをもってきて、それを見ながら一緒にオシャベリした人という感じになるのだろう。

 小学校につくと、多目的教室というのだろうか、普通の教室の4倍ほどはありそうな大きな部屋へ案内された。さて、子どもたちに、どのようにしてモノとであってもらおうか。
 「韓国パック」にはいっているモノは、大きく2つにわけることができる。ひとつは通学カバンとその中身、もうひとつは伝統的な衣装や楽器や仮面などである。ともに韓国の子どもが実際に学校へ持っていったり、伝統を学ぶ授業の中で使われているもので、ホンモノである。とくに、通学カバンとその中身については、李さん家のドンファとウィジョンと一緒に、ソウルのデパートや学校のそばの文房具屋で買ってきたもので、「選ぶ視点」もホンモノなのだ。

 こうしたパックの開発調査は、1年ほど前からはじめており、実物資料が子どもの前で発揮する力のすごさは、今まで何度も目にしてきた。どの地域のモノであっても、どの学校のどの学年であっても、教室でスーツケースからモノを取り出したとたん「わぁー!」と歓声があがる。興奮しすぎて授業にならなくなるのでは、と危惧することもしばしば。
 しかし「韓国パック」については、モノがあまりにも日本のそれと似ているため、子どもたちはさして関心を示さず、さめた反応しか返ってこないのではという気もしていた。そこで、まずは日本のと同じような通学カバンをみてもらい、後から伝統的な衣装や楽器や仮面を見てもらうことにした。最初の反応はいまいちでも、後半の伝統グッズでもりかえそうという作戦だった。

 休み時間になっても、リュックを背負って教室中をぐるぐる歩いている子、太鼓をたたき歌をうたう子、チェギで遊び続ける子、とっかえひっかえ衣装を着ている子。モノの珍しさという点では、他の地域のパックにおとるかと心配していた「韓国パック」だったが、実物資料のすごさはここでも証明された。というよりも、似ていることでより自分に近づけて理解できるのかもしれない。もしくは、コンテンツ(中身)以上に、ソウルに暮らす子どもが実際に使っているものというコンテキスト(文脈)から、さまざまな情景がうかんできたのかもしれない。それとも、韓国に住む子どもが使っているものを見ながらも、考えているのは自分のモノ、自分のコトだったのかもしれない。

 こうした実物資料は、その「であい」において確実に子どもたちの心をひきつけ、とてもパワフルな学びのリソースになる。しかし、であうだけでは学びは成立しない。モノとじっくり「むかいあう」ことで、ひとり一人が自分なりの意味をみつけることができれば、リソースとしての価値はさらに増すにちがいない。韓国パックをとおして、子どもたちがどのような「Myモノ語り」をつむぎだすのか楽しみだ。
(国立民族学博物館 講師/研究機関研究員)

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5月7日より小・中学校向け「韓国パック」の実験運用開始!!
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          ┃ 子どものための持ち運びできる ┃
          ┃ 小さな博物館「韓国パック」の ┃
          ┃ 貸し出しを、特別展「2002年ソ ┃
          ┃ ウルスタイル」の開催期間中お ┃
          ┃ こないます。         ┃
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         くわしくはホームページをご覧ください。
     http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/pack/
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  ● お知らせ

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       ☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event
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    ★5月19日(日)研究公演 14:30~16:00
     http://www.minpaku.ac.jp/museum/event/slp/performance0205
     韓民族の風刺!固城五大広大台戯仮面の宴
     【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
                     ※参加無料・申込み不要

    ★チャンゴ演奏 出演:コッソンイ
     5月11日(土)13:00~(20分程度)
     5月19日(日)11:00~12:00の間(20分程度)
     【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
                     ※参加無料・申込み不要
  
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    ■□■□■特別展示館地下「みんぱくシヂャン(市場)」■□■□■
    □■□■□民博の前庭  「みんぱくマダン (広場)」□■□■□

     シヂャン……「韓国の食」、「日本の韓国食」コーナーなど
           韓国『食の世界』を展示します。
           土・日・祝日に韓国食の出店、販売を行っています。

     マダン………毎週日曜日(5月19日をのぞく)の1時からと
           3時からの2回、安聖民さんのパンソリ公演を
           おこなっています。
      ※雨天の場合は常設展1階エントランスホールで開催。
           
      あなたが主役です。みんぱくマダンで韓国芸能を公演したい
      方は、ソウルスタイル係までお申し込みください。
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        シヂャン、マダンのお問い合わせ・お申し込み
             みんぱくソウルスタイル係
         TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247
           E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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     ☆特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」
      【会期:3月21日(木)~7月16日(火)】
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index

      トドリのフィールド雑記
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/todori/
        現在の韓国の多様な側面を伝えるエッセー。随時掲載。

      韓国パック
       http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/pack/

     ★国立民族学博物館のホームページ:みんぱくウェブサイト
       http://www.minpaku.ac.jp/
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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 ドンファとウィジョンがかよう盤院小学校でアンケートをおねがいしました。回答をよせてくれたのは、6年2組と4年2組の全生徒84人。  日本について知っていることは? という問いかけにかえってきたのは、支配や侵略などの否定的イメージが32件でダントツ。その内訳は、

 教科書歪曲…9
 植民地支配の歴史…14
 豊臣秀吉による壬辰の乱…6
 竹島の領土問題…3

とつづいて、おもわず居住まいを正すところですが、もっと等身大の反応もあります。

 ワールドカップ共催…18
 マンガやアニメなどのキャラクター…8
 礼儀、秩序、親切、清潔などのイメージ…6

 アンケートの成否は、子供の生きる世界をリアルに浮き上がらせるかどうか。子どもたちが一番大切にしているのはなに? ソウルスタイルを知る者にはもはや説明無用でしょう。84人中66人が両親や家族と回答しています。

 このアンケートを考案してくれたのが佐藤優香さんです。世界の子供アンケート大作戦のこれはほんの前哨戦! 開発中の「みんぱっく」も韓国版の完成で7作目。これまでいくつかの小学校で試験運用を繰り返してきましたが、そのすべてにかかわって「みんぱっく」の志を身をもって体現してきた熱いおもいがあります。

 盤院小学校のアンケート結果は、お茶の水女子大学の洪賢秀さんの日本語訳をつけて特別展の教室で公開されています。
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     ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
    発行しています。
      http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)

        E-News配信解除: http://www.mag2.com/m/0000086722.htm

      バックナンバー: http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/index
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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