国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.05.29 ━

 ソウルスタイルのオープンから2ヶ月あまり。会場には、はじめてのお客さんはもちろんのこと、二回、三回と遊びにこられたかたもたくさんいらっしゃいます。
 ところで、なにかと謎が多い佐藤さん(本誌編集長)ですが、案の定、今回登場する伏見さんにも、「これは韓国展じゃない」という謎の言葉を放っていました。この言葉が気になる人は、なるべく早くソウルスタイルに答えを探しにいきましょう!!こりゃKOREA第10号をお届けします!
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 10号目次
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-14
   │   アジア情報交差点・ソウルスタイル取材日記
   │
   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-15
   │   韓国 めまぐるしく激しく
   │
   ◇─お知らせ:イベント情報等
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 14

      アジア情報交差点・ソウルスタイル取材日記
伏見香名子(ふしみ かなこ)
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 「お、これを書いた人とは多分波長が合うだろう。」
 たまたま目に止まったソウルスタイル2002について調べているうちたどりついたホームページを見てまずそう思った。直感は信じてみるものである。

 この番組に移籍してきて一ヶ月足らず(当時)。私にとって一本目の企画となったこの提案はソウルスタイル自体の面白さからいきなり第一特集枠を勝ち取り、幸先の良いスタートとなった。
これまで報道畑ばかり歩んできて、長物(3分以上の番組)をあまり受け持つことがなく、いままでは事前取材もろくにする暇がなかったのだが、上司の「いまからでもすぐ大阪行ってこい」令のもと、一路伊丹へ。そこで出会った朝倉さん、佐藤さんは想像以上に魅力的な人たちだった。お二人合わせて5時間ほど。展示前の貴重な時間を奪い取り、ソウルスタイルのイロハから教えていただくうちにこれはもしかしたらとてつもない展示なのかもしれない、と全身鳥肌がたつような感覚を覚えたりしたものだ。
 企画当初は単純に「日韓交流の話ができれば」と思っていたが、お二人の、そしてきっと彼女とも波長があうだろうなあと直感したキムさんの、想像以上のソウルスタイルに対する思い入れに圧倒された取材だった。同時にみなさんの思いをどこまで映像でつたえることができるか、どんな風に反映したらいいのか。羽田へ戻る飛行機のなかで、自問自答を繰り返すこと1時間。番組的には単純な日韓交流の話を期待されているのは十分分かった上で、そこだけに焦点をあてることには非常に抵抗があった。

 佐藤さんは「これは韓国展じゃない」と言い切った。そうか。そうなんだ。あくまでもこれは2002年のソウルスタイルなんだ、と自分では納得できたものの、いざそれを形にするとなると。。。。しかも上司たち好みに味付けせにゃならぬ。うむむむむむ。責任重大。どうしよう。しかも放送日は特展開始直後に繰上げされてしまった。なぬ?!開幕の模様を取材してる暇がない。うむむむむ。。。困った困った困った。ということは、李さん一家の家の再現だけでソウルスタイルを語らねばならぬ。思い悩んでも仕方ないか。主催者も新しい試みに挑戦しているのだ。よし。やってみるか!とは意気込んではみたものの、取材が無事終わりそれまで8年間の取材人生の中で記録をほこった30本(注:テレビ業界で使用されるテープ一本は30分録画可)弱のテープの山の中にうずもれて、途方に暮れることしばし。コンテナからダンボールが下ろされてくるシーンだけでも優に3時間は撮影したぞ。困った困った。。。困ったのは私だけではない。とにかくこのモノに関するエピソードも、李さん一家のこんなこぼれ話も、民博のこんな側面も全て詰め込みたがる私の勢いに歯止めをかける編集さん。どんなに思い入れがあっても番組枠は決ってる。断腸の思いで削った映像がどれだけあることか。
 そして何度も現地民博でお世話になった広報の石井さん、大石さん。後者に至っては東京へ帰ってからもあふれでる突拍子もない私の質問事項でタダでさえ忙しい身を削って頂いてしまった。結局それだけでもあきたらず、収録直前の開幕前日、「大石さん、やっぱり私たち、明日行きますっ」と無理やり押しかけ、無事編集は終了したのであった。。。普通は撮影自体は編集に入る前、一週間まえまでに終わってるもんである。でもどうしても、開幕を見た人たちの声と共に、あの番組を成立させたかったのである。事実、巨大なスクリーンの前で料理をする金さんの映像に見入る初老のカップルや、子供たちの通う学校の教室で学ぶ来館者の表情が、この展示の成功度を、ものがたっていたように思えた。

 編集中の週はろくに家にも帰れず、1日平均の睡眠時間が3時間を切っていたが、不思議と疲労感はただよわなかった。この展示は世界でも稀にみる試みなのだ、ということ。その場に立ち合わせていただいたこと。飄々とした風情の中(?)にも垣間見えるこの展示にかける佐藤さんの情熱にふれ、多分私自身がかなり興奮状態にあったのだと思う。(おまけに後日佐藤さんとは誕生日が同じだということが判明。なーんーと。なんか波長が。。。とは思ったが、まさかそんなご縁があるとは思ってもみなかった。めぐりあわせですねぇ)民博の歴史に残る展示に準備段階からつきあわせていただいて、この番組での自分にとっての初特集がソウルスタイルで、本当に幸せでした。この場をお借りして、取材にご協力いただいたすべての方に、感謝申し上げます。
(NHK BS-1 アジア情報交差点・ディレクター)

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 15

      韓国 めまぐるしく激しく
渡辺達治(わたなべ たつじ)
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 「2002年ソウルスタイル」の関連取材で、昨年十二月、初めてソウルに行きました。民博の朝倉敏夫、佐藤浩司先生らのご協力をいただき、李さん宅を訪れ、ソウルを見て回りました。連載記事を書くため、現代韓国と日本の似ているところ、違うところを知るのが大きな目的の一つでした。3泊4日と慌ただしい日程の中で、韓国の近現代史のめまぐるしさ、様々な社会現象の激しさが印象に残りました。

 李源台さんの半生にも、そのことが現れています。1959年生まれの源台さんは「自分は『十月維新世代』だ」とおっしゃいました。強権的政治体制に闘いを挑み、後の民主化への流れを作った世代です。源台さんが安東大学に入学した79年といえば、朴正煕大統領が側近に撃ち殺された不穏な年でした。学生運動に身を投じた源台さんは、当局ににらまれて非公式に退学させられ、軍に入隊することになりました。その後、源台さんは復学を果たしたわけですが、「ソウルスタイル」会場にある若き日の源台さんの写真を目にすると、長髪で精悍な面構えがかつての「闘士」をほうふつさせるのではないでしょうか。

 源台さんは大学卒業後、ソウルの企業に職を得て、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を続ける韓国経済の「企業戦士」の列に加わりました。金英淑さんとの結婚は88年、現代韓国史の一つの頂点、ソウル五輪の年です。「ソウルスタイル」会場に、結婚前のラブレターが出ていますね。東華君が生まれ、義政ちゃんが生まれ、韓国文化政策開発院に転職し、展示の目玉にもなっているマイホームを手に入れ・・・次に来たのは、韓国経済の破綻。97年、アジア通貨危機の嵐の中、国家経済がIMF管理下に入るという屈辱的な出来事でした。

 さてこの辺りで、とても新聞記事にはならないような強引なやり方で、源台さんの半生と日本のおじさんたち(特に団塊世代)の半生を比べてみましょう。源台さんは、団塊のおじさんたちが安保闘争の「闘士」だった時期より約10年遅れて「闘士」となりました。源台さんがばりばりの「企業戦士」をやっていた80年代終わり、我が日本も「24時間戦えますか」状態でした。日本が長期不況でいよいよ傾いてきた90年代終わり、韓国経済は既に「破局」に到達していました(その後、立ち直っています)。

 言いたいのは、こういうことです。高度成長/政治闘争・経済ブーム・経済破綻という現代史の流れに目を向けると、韓国が日本より遅れて始動し、やがて日本を追い抜いて突っ走っていったことがわかります。日本では最近「不況が底を打った」と言いだしたので、経済破綻まで行き着くかはわかりません(むしろ緩慢な衰微の道を行くのかも知れません)が、私など、お隣の韓国の人たちが「破局」を乗り越えて力強く歩み続ける姿に、妙な安心感を覚えてしまいます。
 首都一極集中の度合い、学歴社会の崩壊とその一方での激烈な受験戦争、社会のIT化といった点でも、韓国社会のめまぐるしさ、激しさを指摘できると思います。こうしたテーマにまつわる資料は、「ソウルスタイル」会場にいろいろとあります。やっていること、経験していることは結構よく似ているのだけど、どんどん加速していく人たち--というのが私の韓国評です。短期間の滞在とにわか勉強で考えついたことなので、一面的な見方に過ぎないとは思いますが。
(読売新聞文化部・記者)

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  ● お知らせ

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       ☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event
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      ★6月1日(土)13:00~14:00
        「セッパラム劇団」芝居・サムルノリ
        「西宮市立西宮高校 ダンス部」踊り

      ★6月16日(日)11:30~
        「ヒガシモズペ」と「大韓民国婦人会チャンゴサークル」
         サムルノリ

      ★6月16日(日)14:00~
        「東大阪市立柏田中学校」サムルノリ

      ★6月23日(日)11:00~
        「芦屋チャンゴ」プンムル

       【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
              ※参加無料・申込み不要
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           マダン公演のお問い合わせ・お申し込み
              みんぱくソウルスタイル係
          TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247
            E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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  ┌────新聞・雑誌で「ソウルスタイル」が紹介されました!───┐
    月刊クレジットエイジ2002年6月号
     「一市民の暮らしから知る『韓国の家族のあり方』」
    季刊ポテトチップス春~夏号No.25
      VISIT「2002年ソウルスタイル」
    日経インテレッセNo.74
     「韓国の食まわり情報が手に入るスポット10」
    神戸新聞5月20日(月)
     「『近くて近い』隣国実感」
    日本経済新聞(夕刊)5月23日(木)
     「ソウルフル・ライフ(3)墓のある場所が故郷」
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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 展示について取材をうけることがあります。もちろん、取材の内容もアプローチもまちまち。展示の意図を理解しようと努力してくれるところもあれば、はじめから見たいようにしか目の前の事件をとらえられないところもある。それでもじっさいに手と足をうごかして取材におとずれるだけマシ。まあ、調査や展示も事情は一緒なわけですが。。。。そこで、いつかメディアの側の事情も逆取材しようと機会をねらっていたのでした ヽ(^o^)丿

 NHK BS-1の伏見さんは、東京からカメラマンを引き連れ、民博まで4回も足をはこんでくれました。その熱意の結晶?は3月23日にNHK(BS-1)の「アジア情報交差点」で放映されています。オープン前の最終チェックに展示場をおとずれたオモニの姿を映像はとらえていました。

 これは韓国展ではない! そう。日韓の文化のちがいを理解しあう。。。あたりまえのように口にしてしまうこの一言に待ったをかけるのが「ソウルスタイル」という名称。ぬぐってもぬぐってもぬぐいきれない体のシミのような文化イメージを捨てて、TPOにおうじて身にまとうスタイルのちがいとかんがえたら、、、そうしたら、人間同士の理解にももっとちがった可能性がみえてくるのではないでしょうか?

 読売新聞の渡辺さんは、家財道具を搬出する直前の李さん一家をソウルまで取材にきてくれました。まさに李さん一家をとおして韓国社会をのぞく展示のコンセプトを現地で敢行。この取材の成果が、3月25日から3月29日まで読売新聞夕刊(大阪)に連載された「2002年ソウルスタイル」のコラムです。

       - http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/news/32 -

 無理を承知で、気ままに書いていただいた原稿ですが、テレビと新聞のスタイルのちがい、、、それに展示にたいする女性と男性のスタイルのちがいまで垣間見えるようでソウルスタイルの面目躍如!?

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     ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
    発行しています。
      http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)

        E-News配信解除: http://www.mag2.com/m/0000086722.htm

      バックナンバー: http://www.minpaku.ac.jp/special/200203/news/index
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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