国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.06.04 ━

 いよいよはじまりましたね、ワールドカップ。韓国と日本には、世界最高峰のアスリートたちが集まりました。これからのほぼ1ヶ月、各地でいろんなスペクタクルをみせてくれるでしょう。
 W杯期間中も絶賛開催中のソウルスタイルから、こりゃKOREA第11号をお届けします。今回は、ピカチュウの前のオーナー、ウィジョンちゃんの登場です。もうひとり、ウィジョンちゃんをすっかりお気に入りの芦屋市のゆりかちゃん(5才)も登場します。ゆりかちゃんとママがみたソウルスタイルを、こりゃこりゃ探検隊(随時隊員募集中!)の佐藤優香さんがリポートしてくれました!!
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 11号目次
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-16
   │   「李さん一家の素顔のくらし」の素顔
   │
   ◇─お知らせ:イベント情報等
   │
   ◇─こりゃこりゃ探検隊
   │   展示のたのしみかた:ゆりかちゃん(5才)の場合
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 16

      「李さん一家の素顔のくらし」の素顔
イ・ウィジョン  
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 わが家に日本人の学者たちがはじめて来たのは2000年11月のことです。私の家はお婆さんのいる三世代家族で、両親ともに民俗学を専攻していることもあって、ソウルに住みながらも昔ながらの伝統をよくまもってくらしています。それに、家族新聞や家族ホームページなどをもっている点も評価されたようです。  それからおよそ2年にわたって、日本の学者たちは家の中の品物をひとつひとつ調べ、家族のあるがままの生活をビデオにおさめ、写真に撮影しました。そうした資料をもとにして、日本の国立民族学博物館では、3月21日から7月16日まで「2002年ソウルスタイル - 李さん一家の素顔のくらし - 」という特別展がひらかれています。この特別展は、一家庭の生活財をとおして、家族ひとりひとりの考えや習慣を知るだけではなく、その国の文化までもわかるという現代生活文化展なのです。

 私は去る3月20日、家族とともに大阪行きの飛行機に乗りました。海外旅行がはじめての私は、学校の勉強をやすんで旅行できることがとても嬉しく、しかも、私たち家族全員にとって特別な旅行とあって胸がときめきました。
 大阪の関西国際空港はソウルの仁川国際空港同様にとても大きな空港でした。大阪、京都は韓国の慶州のように多くの文化遺産がある土地です。そのせいか、入国審査を待つあいだ、旅行に来た韓国人のおばさん、おじさんたちをたくさん見かけました。
 空港の外へ出ると、国立民族学博物館から来たおじさんたちが私たち家族を待ちかまえていました。私とお婆さんは韓服を着て、中学生になったお兄さんは制服を着ていました。私たちは、ジャンボタクシーに乗り、万博公園内にある民族学博物館にむかいました。博物館のロビーには、すでに招待客や新聞、放送局の記者、カメラマンが取材のために行き来する姿がありました。
 午後2時きっかりに特別展開幕式がはじまりました。まず日本の国立民族学博物館館長とわが国の国立民俗博物館館長が挨拶をしました。館長たちは今回の展示を通じて韓国と日本がより近い国になってほしいと話しました。

 1階展示室には、本当にソウルのわが家がそのまま再現されていました。何ヶ月か前にソウルにあった私の部屋、リビング、キッチン、トイレはもちろん、そのなかにおかれている物までが、あるべき場所にそのまま展示してありました。私のベッドにひとりで寝ているピカチュウの人形やお兄さんが一番好きな本、お母さんの化粧台、お婆さんのミシンも全部ありました。
 展示場にはまるで人の家を訪問する時のように玄関で靴を脱いではいります。多くの観客がタンスの扉をひらいて、高く積んであるきれいな綿入れの布団をさわり、韓服を取り出していました。そして、私の教科書や本を自由に広げて見ているのでした。私はここが日本ではなくソウルのわが家かと勘違いするほどでした。お婆さんとお母さんも、自分の家のように気楽でいられるので、あと何日か休めればよいのにと言っていました。

 今回展示されたわが家の物は全部で3500種類にもなります。展示場には、家だけでなく、お爺さんのお墓や私の学校、お婆さんの田舎の家、お父さんの職場の部屋も再現され、観客たちにあるがままの姿を見せていました。展示場の大きなモニター画面には、私の顔と学校生活の映像が絶え間なくうつっていました。はじめはすこし恥ずかしかったけれど、韓国の子供の生活を日本人にそのまま見せるのだとおもうと、恥ずかしいよりも誇りにおもうようになりました。それに、これらの物が展覧会終了後にみな博物館にはいって、価値ある文化財として保管されるということも嬉しくおもいました。

 3月23日の土曜日には、私たち家族が展示場をたずねてきた観客たちと一緒になって話をしたり質問をうけるフォーラムがありました。私は、4月から小学5年生になるという日本の女の子と知り合いました。彼女たちとあやとり遊びをしたり、割り算の計算問題を出して誰が一番はやく答えるかを競争しました。遊び方はすこし違うけれど、日本の子供たちも私たちとおなじようにあやとり遊びをすることに驚きました。その日、私は日本の子供たちと一緒に写真を撮り、学校と住所、電話番号、名前をみんなで手帳に記しました。
「いつでもソウルにある私の家に遊びにおいで」
と言ったら
「ワァ!本当?」
と驚いて、本当に喜んでくれました。この友達のなかの誰が私の家に遊びに来てくれるかとても待ちどおしい。いつかきっと遊びに来てくれるようにねがっています。まだおたがいに言葉を知らないからたいへんですが、一緒に遊ぶのならいくらでも心は通じます。

 私は日本に行ってから本当に韓国と日本は「近い国」だとおもいました。飛行機に乗っている時間も短く、顔も似ていて、風俗や習慣もおなじところが多いからです。たくさんの日本人がわが家の特別展に来て、じかに物をさわりながら、韓国の文化を理解し、真実の「近い国」とおもってくれたら、本当に親しい国になれると信じています。(この原稿は「独立記念館報」5月号に掲載された。翻訳協力:花沢博美)
(ソウル盤院小学校5年)

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  ● お知らせ

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       ☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆
    http://www.minpaku.ac.jp/special/200203/event
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      ★6月16日(日)11:30~
        「ヒガシモズペ」と「大韓民国婦人会チャンゴサークル」
         サムルノリ

      ★6月16日(日)14:00~
        「東大阪市立柏田中学校」サムルノリ

      ★6月23日(日)11:00~
        「芦屋チャンゴ」プンムル

       【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
              ※参加無料・申込み不要
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           マダン公演のお問い合わせ・お申し込み
              みんぱくソウルスタイル係
          TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247
            E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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  ┌────新聞・雑誌で「ソウルスタイル」が紹介されました!───┐
    日本経済新聞(夕刊)5月30日(木)
     「ソウルフル・ライフ(4)公衆トイレ」
    朝日新聞6月2日(日)
     「視線『2002年ソウルスタイル 李さん一家の素顔の暮らし』」
    月刊みんぱく6月号[国立民族学博物館広報普及誌]
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/bookbite/gekkan/200206
      「服で語る李さん一家」佐藤浩司〔表紙うら〕
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 ̄ ̄ ̄ ̄こりゃこりゃ探検隊 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

         展示のたのしみかた:ゆりかちゃん(5才)の場合
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 友達から、携帯に「民博へ行ってみようと思うけど5才でも楽しめる?」とメールがきました。どうかなぁ、ちょっとなぁ、とも思ったのですが「博物館という学びの場をみなさまに」と、うたっているわたしなので「5才なりの楽しさがあるかも」と返事をしました。
 で、結果はどうだったと思いますか?
 いやはや、わたしもちょっとびっくりしました。とっても楽しかったみたいなのです。とにかく、ものすごく興奮していました。
佐藤優香(こりゃこりゃ探検隊員) 

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 「ソウルスタイル」の楽しみは、展示場に入るまえから始まっていました。ゆりかちゃんは、まず、エントランスのひろばに用意されていたチェギチャギをちょっと試して、マダンへパフォーマンスの一団が入ってくるなり、「くるくるまわる帽子、ほしーい」とさけび、15分くらいパンソリの公演を見ました。

 そして、展示場へ。とりあえず、1時間かけて、屋台でお店屋さんごっこしたり、お父さんの会社で会社ごっこしたり(打ち合わせセットでコーヒーでものむ?と言ってくつろぎ、なんでたばこ2本もすってるねん!と細かいチェックも)、学校で「勉強」したり(本人が「勉強した」と言っていた)、冷蔵庫やタンスを開けまくったり。と、再現された李さんの世界を「ごっこ遊び」という形でぞんぶんに楽しみ、その後マルチメディア・データベースで李さん一家のもちものをくまなくチェック。

 それから、バラ園でおやつを食べ、しゃべりつづけるママとわたしを置いて、一人で広場にもどってコマやチェギチャギをしていた様子。それが約1時間。だれに教えてもらったの?と訊くと「おまわりさん」との返事。どうやら警備員さんのことらしい。「また、学校で勉強したい」と、しきりにせがむので3人で再び展示場へ。

 日本語でさえ、ようやく自分の名前が書けるようになったばかりなのに、ハングルプリントをそれなりにこなしている様子がいじらしい。しかも、机の横に自分のリュックをかけて、気分はしっかり小学生。しばらくすると、またデータベースがみたい、と満員のパソコンの前へ。クリックし続けている家族やカップルをじろじろと見てプレッシャーを与え、ようやく自分の場所を獲得。まようことなく、ウィジョンをクリック。リュックをクリック。筆箱をクリック。ヨッキトッキをクリック。と思ったら、今度は、展示場にぱーっと駆けていって、ウィジョンの持ち物の前に寝そべって、じーっと見ていた。「これ(ヨッキトッキ)すごくかわいいね。それから、ウィジョンもかわいいと思う」と、ちょっとおねえさんぶった口調でコメント。

 2階へも行ったが、はずかしくて民族衣装に手を通すことはできない。で、1階へおりてきて、二段ベットにのぼる。他の部屋をみていたわたしたちを、わざわざ呼びに来て「ウィジョンのパジャマもあるの」「ゆりかも二段ベットがいいなー」。ママに促されてようやく出口へ。でっかいトウガラシをひとつ取っては鼻につけ、ふたつ取ってはクンクンして、粉末トウガラシの中へ指をつっこみ、ようやく外へでたのでした。

 お土産に買ったのは、自分のために携帯ストラップ。ちなみに、携帯電話は持っていない。何に付けるかは「まだ決めてない」そうだ。友達へは、韓国のり。どうしてもあげたいとせがまれてママは3つも買ったそうな。
 ちゃんとバイバイしなさい、とママに言われているのに「もっとみたーい、もっとみたーい」を連発しながら、わずかに手を振り、民博のゲートから出ていったのでした。

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 ゆりかちゃんのママは、20代のはじめに美術館で気分がわるくなってからここ10年、museumというところへ足を運んでいなかったらしい。でも、今日ようやく、そのトラウマから開放されたような気がしたんだって。すなわち、博物館再デビューをとげたということ。
 本日、母の日にして、この母娘、ともに博物館デビューを果たしたのでした。

 ところでママからの後日談によると、「ソウルスタイル」からの帰り道、ゆりかちゃんは車にのったらすぐにねてしまったとか。家に帰ったらちょうどパパも帰ってきたのでごはんを食べに行ったそうです。なに食べたい?とパパにきかれ、即座に「焼肉!」と答えたのは、ママもびっくり。勉強したこと、ニ段ベッドがあって「ウィジョンのパジャマまであるねん」と、興奮してパパに報告。「お店屋さんごっこと会社ごっこもした」とも。そして、「いいこと思いついた! うちもニ段ベッドにしてゆりかは上でねるねん。それで下はママっていうのはどう?」と言われたのには、ママも参っちゃったそうです。

 5才の子どもがトータルで2時間も展示場ですごしたというのは奇跡にちかいのでは? それに、あとからゆりかちゃんが話してくれたところによると「遊園地よりもおもしろかった」そうです。「ソウルスタイル」って、やっぱり奇跡の展示だったのですね。マダンやチェギでの遊び時間も入れると、ほぼ3時間。こんな博物館展示が、かつてあったでしょうか。しかも、とりわけ子どもを意識してデザインされた展示でもなんでもない。きっと子どもにも通じるのですね、「ソウルスタイル」の熱いメッセージって。

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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 展示場にあるのは特別でもなんでもないただの家。下着から給与明細、成績表やラブレターまで公開されているとはいっても、じつはどこの家にもあるありふれたものばかり。隠すべき物まで晒されている事情は子供にとって展示のたのしみとはおよそ無関係です。それでも子供から老人まで、それぞれのソウルスタイルにとけこんでしまえるのはなぜ? そこに人生の縮図、社会のモデルがあるせいか? 巨大なままごと遊びの体験場、ソウルスタイルの問いかける真実は予想外に大きいのかもしれません。今回は演じる者と演じられる者の一言をおとどけします。

 7号でおしらせした学習キット「韓国パック」の貸し出し第一号は住之江小学校でした。民博見学に来たその足で即持ち帰り。フットワークのよさに感心していたら、担任の畑勝美先生はなんと大阪スタイルの調査まで敢行しているではありませんか。大阪の小学生の持ち物、一日の行動表から夕食のメニューまで、、、M子ちゃんの夕ご飯。1日目は、どて焼き、ユッケ、自分でつくったオムレツ、レタスとキュウリのサラダ、わかめスープ、それにご飯とお茶。2日目は、鉄板焼き、アスパラとレタスとキュウリのサラダ、ご飯、お茶。3日目は休日で外食、焼き鳥(ズリ、ナンコツ、カワ)、鶏ご飯、雑炊、コーラ、、、さ、さすが、これだけで家族の姿まで目に浮かぶようです。学校まで見学におしかけた日には、何十年かぶりで給食までごちそうになってしまいました。この場をかりて、4年2組のみなさんどうもありがとう ヽ(^o^)丿

 ゆりか隊員につづけ。お年寄りの探検報告募集中です!

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     ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
    発行しています。
      http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)

        E-News配信解除: http://www.mag2.com/m/0000086722.htm

      バックナンバー: http://www.minpaku.ac.jp/special/200203/news/index
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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