国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.06.26 ━

 気がつけば、ソウルスタイル、閉幕まで一月を切ってたりするわけですが、あの李さん家のものはどうやって保管されるのかな。知りたいですよね、とくに、ピカチュウとか(興味しんしん)。今度、だれかレポートしてくださ~い。
 いよいよ佳境に入ったソウルスタイル。こりゃKOREA探検隊はどこにたどりつくのか?明日なき暴走・本誌編集長はどこに行くのか?!ソウルスタイルにからめとられた人々がおりなすこりゃKOREAから、第13号をお届けします!!
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 13号目次
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-18
   │   展示・演示・念じ その2
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-19
   │   奇跡の展示
   │
   ◇─お知らせ:イベント情報等
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 18

      展示・演示・念じ その2
中西 啓(なかにし ひろし)
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 開梱当日は快晴。雨の心配は杞憂に終わり、とにかく搬入口外の駐車場にシートを広げて資料の詰まった段ボール箱を広げることになりました。さて、いよいよコンテナの扉の封印を解くとまず目に飛び込んできたのは屋台。その後教室の机や椅子、ハングルの看板などに引き続いて赤いテープで梱包されたダンボール箱の山。タンスや冷蔵庫、システムキッチンも梱包されています。駐車場が見る見る荷物で埋まっていくので確認できたものから会場に運び込みます。箱に張られたラベルの数字を頼りに仕分けしながら当日会場にいた全ての人たちの手で何とか夕方までに運び終わりました。大きな家具などの梱包は運送会社の人たちに頼んで解いてもらいます。作業を終えたのは夜7時でした。

 翌日からはいよいよ段ボールの箱の封を切って中の資料を出していきます。エアクッションを外すと現地調査で、画像で見慣れた様々な李さんの家の生活財が顔を出します。破損がないか確認しながら慎重に作業、借り入れ資料は事故のないよう専門の業者に託します。
 1階は主に中西、2階は主に大野木が監督しながらスタッフ2人と学生アルバイト数人とで梱包が外された資料をわたしが現地調査の際に撮った画像を見ながら元あった通りに配置していくのですが、わたしの画像には引き出しの中や扉の中の画像がありません。調査の際わたしには扉を勝手に開ける勇気がありませんでした・・・。急遽佐藤先生に図録の校正刷りをお借りして台所の戸棚やハルモニの部屋のタンスにも正確に食器や色鮮やかな布団を納めていきます。
 ここでの一番の悩みは佐藤先生の撮られた画像、わたしの画像、図録の写真によって場所が動いているモノたち。それぞれ撮影日が異なるので当然といえば当然なのですが各々こだわりもあってあっちに行ったりこっちに行ったり。結局図録の写真を基準に、最後の判断は段ボール2箱分のどこに置くのか分からない資料ともども李家のオモニに委ねることになりました。

 ここまででおよそ二週間、一応全ての資料が会場内の至る所に置かれたところで包丁や先の尖った韓国独特の金属製の箸などの危険物の養生、盗難の恐れのある小物類や転倒の恐れのある壺などの固定などを行います。と、同時に説明文やコーナータイトル、各資料のキャプションなどのグラフィック(文字)にも取り掛かります。  本来ならばあらかじめ原稿を頂き専門のデザイナーがレイアウトするべきものなのですが今回は時間の余裕が全くなかったので会場にパソコンとプリンターを持ち込み、わたしたちの手でその場で制作することになりました。という訳でわたしたちはグラフィックデザイナーではありませんので会場内グラフィックの稚拙さには目をつむって頂く他ありません。
 特にハングルには苦労しました。研究者の先生から手書きで原稿を頂き、ハングルの五十音表のようなものでその文字を捜しだし、ハングルのパーツのアウトラインデータを組み合わせて文字にしていくのですが、本当にこれで合っているのか確信を持てないまま会場に掲げるのには勇気がいりました。幸い間違いはなかったようですが。

 このあたりからは毎日夜8時9時まで差し入れて頂いた宅配ピザをほおばりながらの作業です。最後に映像や音響、照明の調整、展示の細かい手直しや追加などを行い、取り敢えずの完了を迎えたのはオープン前日の深夜0時。最初はどうなることかと思いましたが念ずればなる。情報企画課の宇治谷さんや宇江さんらともども公園の鉄製ゲートをよじ登ったのも今となってはいい思い出?。最後の夜、佐藤先生が床に寝転がって3000余点のモノたちの写真で埋め尽くされた円弧を眺めていたのが印象的。何を思われていたのでしょうか?。
 実際に作業に当たった「キッチンスペシャリスト」大谷くん、「テグス職人」松崎くん、「アウトライン」山崎くんたちそれぞれの苦労はいずれ本人たちに吐いてもらいましょう。

 わたしの今の心配は閉幕後にあります。あれだけの資料をどのように収蔵するのか、そもそもそれだけのスペースが民博に有りや否や。家具に納まっているモノなど取り出しばらしてしまうと多分二度と再現できません。宝が宝でなくならないようないい方法をお考え下さい。全てが収まってからこの貴重で楽しい体験のお礼を言いたいと思っています。
(京都造形芸術大学空間演出デザイン学科)

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 19

      奇跡の展示
大野木啓人(おおのぎ ひろと)
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 現代の韓国を紹介するという展覧会が多くの人と時間の関わりのなかで「2002年ソウルスタイル」という着地点に到着したことは感慨深いものがある。
 展示には多くの制約がある。展示メッセージを解かり易くするにはどうすればいいか、展示品が見やすく、傷まないようにし、予算内に収め、時間と戦い、展示導線や人が多いときはどうするか、そして展示品が欲しくてもなければ展示することも出来ない。これらの要素が絡み合ってできたのが「2002年ソウルスタイル」展である。

 最初の韓国調査での第一印象は日本の現状と変わらないという事であった。この韓国の今を魅力に満ちた展覧会として紹介することができるのかであった。なぜなら、日本との違いは、見た目には迫り来るハングル文字とニンニクを主にした生活臭ぐらいだからである。いかに展示をドラマチックにしようとも、そこに展示されているのは日本の日常と殆んど変わらない「普通の物」達なのだ。それを果してわざわざ民博に人々は観に来てくれるであろうか。
 ただ、この「普通の物」達ひとつひとつが何らかの意味を持っており、あるべきところにある必然性がそのものの意味を解き明かしていくのである。このことによって、新たな意味と価値を産み、見る人が興味と発見を見出していくであろう事はある程度は予測していた。結果、私の予想をはるかに越えた「普通の物」達ではなかったのである。

 当初から現代の韓国をどのようにリアリティをもってあの限られた民博特展会場の空間の中で体感してもらえるかは容易なことではないのはわかっていた。また、五感に訴えるという展示手法を一つ一つにおさえたとしても、五感をすべてそろえる事が出来たとしても、それで韓国のリアリティを正確に伝えられるとは限らない。あらゆる可能性を模索し、多くの方々の意見を検証して一つ一つの決断を出すことは、私に課せられた責任として迷うところであり、勇気の要ることでもある。幸いに今回携わったプロジェクトのメンバーが優秀かつ熱心であったことが私を救ってくれたし、この展覧会を成功に導いた大きな要因のひとつであると思う。

 そして何といっても最大の貢献はご承知のように李氏一家という信じ難い協力者の出現である。これはW杯で日本と韓国が同時に優勝することより確率の低い出来事であったように思われる。まさにこのプロジェクトメンバーの中に恐ろしい強運の持ち主がいるとしか考えられない奇跡が起こったのである。この経緯からまとめまでは、佐藤浩司さんが綿密に述べているので省かせてもらうが、この一連で一言述べさせてもらえるなら、この奇跡的幸運を今後に引き継ぐべきだと切に願うのである。

 つまり、ただそっくりそのまま世界規模の財産としてタイムカプセルにしてでもリアリティを持って後世に残すべきである。その価値は今後、世界文化遺産に匹敵するものにいずれなるであろうと確信する。

 この展覧会もあと残すところ三週間程度になってしまった。展示品たちは会期終了と共に会場から姿を消す。しかし、作り手の我々にとって展示の時に一つ一つ手向けた「もの」や事柄は心の中にしっかり残っているものである。色々な苦労はあるが展示品に直接触れ、その物の持つ意味を確認していく作業の中で得られることや教えられたことは我々現場の人間の隠された特権である。
 今回もまた、多くの人々と素晴らしい「もの」たちに深く感謝したい。
(京都造形芸術大学空間演出デザイン学科)
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  ● お知らせ
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       ☆☆☆「2002年ソウルスタイル」イベント情報☆☆☆
    http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/event
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    ★6月30日(日)14:00~14:15
      「関西大学 朝鮮歴史研究部」 サムルノリ

       【場所:民博の前庭「みんぱくマダン (広場)」】
              ※参加無料・申込み不要
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           マダン公演のお問い合わせ・お申し込み
              みんぱくソウルスタイル係
          TEL: 06-6878-8532 / FAX:06-6878-8247
            E-MAIL:junbi@idc.minpaku.ac.jp
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   ┌────新聞・雑誌で「ソウルスタイル」が紹介されました!───┐
    NHK出版 テレビアンニョンハシムニカ-ハングル講座 2002年7月号
       「大阪でソウルの日常生活をのぞき見する!?」
    日本経済新聞(夕刊)6月20日(木)
       「ソウルフル・ライフ(7)学校給食に雑穀飯」
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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 2000年9月、特別展の実行委員長をつとめる朝倉さんの案内で大野木さんと私は韓国をおとずれました。ソウルの熱気にふれ、マンションのモデルルームやテレビドラマのセットを見学。そのさいの強烈な印象は、帰国後に確認しあった展示の方針にただちに反映されました。
  • 展示のテーマは衣・食・住…展示場の2階「衣」、1階「住」、地下「食」という当時の基本構成は現在の計画にも痕跡をとどめています。
  • 韓国社会のホスピタリティやバイタリティをどう表現するかが鍵…ボランティアのかたがたの協力が必要不可欠でした。展示場にあふれるハングルの看板もダテじゃありません。
  • 五感をくすぐる展示…技術的な制約のなかで、視覚だけでなく音や匂い、手や舌まで総動員させる試みがどのように実現されたかに注目してください。
 李さん一家にめぐりあうのはその後のことです。その李家から家財道具一式をコンテナにつめて搬出したのは昨年の12月21日。コンテナが展示場に搬入された2月25日までのおよそ2ヶ月間、冷蔵庫もベッドもタンスもコンテナに入れられたまま大阪港にありました。いっぽう、前回の特別展「ラッコとガラス玉」の閉幕する1月15日を待って、展示場ではアパートの部屋や学校、職場などの設営作業がはじまります。コンテナ搬入の日は、いわば展示場に再現された部屋への引っ越し。その日から3月20日のオープニングセレモニーまでの約1ヶ月間に、3台のコンテナにおさめられていた物たちはすべてそうあるべき場所で生命を取りもどしてゆくのです。  常軌を逸した圧倒的な物量の展示品をまえに、作業にあたられた中西さんとそのスタッフのみなさん、館内の関係者のみなさんの奮闘ぶりについてはさらに次号でも紹介します。

 ところで、デザイナーのおふたりがそろって心配されているのは展示場のその後。。。。特別展示場では8月1日からコレクション展示「世界の民族服と日本の洋装100年」が予定されています。このままゆくと、7月16日に閉幕をむかえるや否や世界文化遺産「李さん一家のアパート」も1週間で解体される手はずです。

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     ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
    発行しています。
      http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)

        E-News配信解除: http://www.mag2.com/m/0000086722.htm

      バックナンバー: http://www.minpaku.ac.jp/special/200203/news/index
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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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