国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Seoul Style 2002 E-News 『こりゃKOREA!』


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Seoul Style 2002 : E-News
『 こりゃKOREA!』
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/200203/index 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002.07.16━

 今日の特展会場、別に変わったところはありませんが、昨日までとは違う雰囲気が感じられます、、、グスッ。今日で、李さん一家のものと多くの人をつなぎとめていたソウルスタイルが終わります。ものはみんぱく地下に収蔵され、ソウルスタイルにかかわった人々もそれぞれのところに戻ります。

 ソウルスタイルの展示は終わりますが、こりゃいつまで続くのか?それがそこにないという巨大な喪失感を埋めあわせるように、まだまだドライブのかかるこりゃKOREA、16号をお届けします!
清水郁郎(副編集長) 
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  こりゃKOREA! 16号目次
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   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-26
   │   ボランティアに参加して
   │
   ◇─2002年ソウルスタイル ここだけの話-27
   │   ボランティアをやりながら質問されたことや、困ったことについて
   │
   ◇─編集後記:こりゃこりゃ通信

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 26

      ボランティアに参加して
片山 智子(かたやま ちえこ)
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 今回の展示にボランティアとして参加することになり、よそのお宅なのに、まるで自分の家のように「いらっしゃい。ごゆっくりご覧下さい。」という気持ちで展示場にたっています。
 ボランティアに行く前の日には、明日は李さんのお家にいける、と心がうきうきしてきます。ですから、おそるおそるという様子で机や箪笥を見ておられる方には、「どうぞ引き出しの中、箪笥の中も見てください。」と声をかけ、安心したように引き出しを開けていかれると、‘やった!’という感じです。

 靴を脱いでゆっくりでき、引き出しの中を見てOK、さわってOK、いすやベッドにはすわってもOKなので、のんびりと見ていかれる方が多いようです。箪笥の中の布団・民族衣装を見て、色のきれいなのに改めて驚かれたり、引き出しの中のテープやおもちゃ、本棚の本、玄関の上の飾り、ピアノの横のレコード盤にびっくりされたり、台所の棚の中、冷蔵庫の中では、自分の家にもあるような身近なものを見つけて驚かれたりされています。私が見つけたもの、教えてもらったものを、お客さんにも気づいてほしくて、「ここを開けてみてください。これを見てください。」等とこちらもおしゃべりになってしまいます。

 「ほんとにみんな展示してあるんですね。カードとかもあってびっくりしました。全部運んできて今、李さんの家族はどうされているんですか? この展示が終わったらここの物はどうするんですか?」などは、一番多く受ける質問です。 そして、新しく家具を揃え、服を揃えての生活を思い浮かべて、聞いた方も、聞かれた方も李さんの大変さに思いをはせ、ため息をついています。李さん一家のビデオが流れていて、その人たちが生活されているそのままが展示されているので、李さんが身近に感じられ、自分の生活と比べて見ている方も多いようです。

 2階は人の一生がいくつものコーナーに分かれて展示されていて、3ヶ所ほど試着ができるコーナーがあります。試着大好き人間の私は、小さなお子さん連れには、1歳のお祝いのところで、ご夫婦・カップル・グループには、結婚衣装や民族衣装のところで試着を勧めています。はずかしがって急ぎ足になられる方もいらっしゃいますが、試着していかれる方も多く、ここを楽しみにしてきたのと言うお客さんも。結婚衣装のところでは、女性同士の場合ひとりの方が新郎の格好をされたり、反対に男性同士の場合一人が新婦の格好をされたりする事もあります。カメラを持ってくればよかったと残念がる方、買いに走られる方、この前は忘れたので今日は持ってきましたよと写される方、一時に試着される方が集中して目の回るような忙しさになることもありますが、いい記念になりましたとよろこんでいただけると嬉しくて疲れも感じません。韓国からの方や在日の方も大勢来られるので、きれいなひもの結び方を教えてもらったりすることもあります。勉強になります。

 2階から下を見ている方は少ないのですが、2階から見ると家の中の様子がよくわかります。お客さんがいないと、玄関を入ってアボジはまずどこへ行くのだろうか、ドンファ君はパソコンの所だろうか、低いテーブルに置いてある漫画の中に目をやっては、机でこれを見ているのだろうか等と動きを想像しながら眺めています。

 ボランティアの名札を見て、韓国語で話しかけられてどぎまぎしたり、聴覚障害の方が来られても、手話ができなくてただただ大きな身振りをするしかなくて申し訳なかったり、質問されて半分もお返事できなかったり等、落ち込むこともありますが、気にしないで下さいと言ってもらって、来られた方に楽しんでもらえるお手伝いが少しでもできたらボランティアをしていて、反対に元気をもらっている日々です。 有り難うございました。

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  ● 2002年ソウルスタイル   ここだけの話 - 27

      ボランティアをやりながら質問されたことや、困ったことについて
韓 周延(ハン ジュヨン)
羅 允珠(ナ ユンジュ) 
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 まだ日本に来て1年もたってない私は日本語が充分ではありません。でもわが国のことが紹介できる機会が与えられたことに、うれしい気持ちいっぱいで「2002年ソウルスタイル」にハングル教室ボランティアとして参加させていただきました。

 ボランティアをやりながら、一番困ったのはやはり日本語でした。来館する一人一人に韓国のことをもっと多く、正しく知ってもらいたく、一所懸命に説明をしましたが、今のわたしの日本語ではそれを充分に伝えられず、いつも残念に思っていました。それから、たまにですが、展示場のボランティアさんから、
「ハンボク(韓服)のオッコルムの正しい結び方は?」
「座布団やクッションなどによく書かれているお花みたいな模様は何ですか?」
「韓国の伝統家具にはどんな木材が使われていましたか?」
など、今までなにげなくすごしてきたこと、やってきたことを聞かれた時には答えられない自分が恥ずかしいと思いながらみなさんの熱心さにとても驚きました。

 また、ソウルスタイルには小・中・高の大勢の学生がやって来ました。ハングル教室では韓国の学生生活や子どもたちの姿などについていろいろ聞いて来たり、興味深い目で教室のあれこれを触ってみたり、置物にびっくりしたり、自分の名前を一所懸命にハングルで書いてみたり、子どもの姿は様々でした。その中で、たまにですが、団体で来て、限られた時間に全部みるため、急いでいるときには、仕方がないと思いながらも、興味のない顔で、いたずらだけして、さっと去っていく子どもや、せっかく教えてあげた韓国語を悪口にして友達をからかったりする子どもの姿を見た時には残念に思いました。

 今回の展示会では、韓国・ハングルについて興味をたくさん持っている人々とお会いすることができました。これからもここで止まらずにお互いをわかり続けていってほしいと思います。

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 ■ 編 集 後 記 :こりゃこりゃ通信 ■ 
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 展示場の李さんの家の内部にはいっさいの解説プレートがありません。ごく日常的な生活空間のなかから何を発見し、どういう物語をつむぎだすかは、それを見る人の経験にかかっているからです。韓国の冷蔵庫はしかじか、と説明するかわりに、まずそこにある冷蔵庫を自分の手であけてもらう仕掛けが必要でした。発見はおのずからやってきます。さらにくわしく知りたい人のためには、生活財のデータベースが展示場で公開されています。すべての物の入手経緯や値段、その物に関係する李家の人びとの思いがそこに書き留められています。

 そして、李家の人びとにかわって、冷蔵庫をあける仕掛けをお手伝いしてくれるのが、民博ボランティアの面々です。「よその家にお邪魔したらお行儀よくしていなければいけませんよ」と言うかわりに、「さあ、よその家にお邪魔したら(人類学者のようにあつかましく?)、どうぞなんでもさわってしっかりと見ていってくださいね」と呼びかけるわけです。しかも、鯱張った展示品の解説ではなく、訪問客が接するのは目の前の家主の人生そのものであることのほうが多いのです。

 こうして展示場では毎日4~6人、ハングル教室のある日にはさらに1~2人の方がボランティアとして展示をささえてくれました。のべにすると会期中になんと669人もの協力を得たことになります。そのほか、土、日、祝日にシヂャンやマダンに協力してくれた多数の関係者がいます。もし、これらのサポートがなければ、ソウルスタイルは開催することさえおぼつかなかったでしょう。
 ソウルスタイルにかかわったことが、人生をすこしでもゆたかに彩るものでありますように、この場をかりてすべての協力者のみなさまにお礼申しあげます。

 これまで、ボランティアといえば展示場の解説のお手伝いでしたが、民博でもあらたなボランティア像をもとめるこころみがはじまろうとしています。民博ボランティアにかんするお問い合わせは、学習支援室(電話 06-6878-8250)まで。現在、87名の方が登録されています。

 3月21日にオープンした「2002年ソウルスタイル」の展示も本日で閉幕をむかえました。展示をとおして、つかのまの時間、ひとつの空間をわかちあった者同士がみずからの体験してきた人生とむきあい、体験できなかった他人の人生に思いをはせる。故郷や学校や飲み屋や、そしてなにより私たちの家庭が本来そうであったように、人と人が出会うとはそうした人生の軌跡の邂逅にほかなりません。私たちの人生をみつめる機会をあたえてくれた希有の展示空間ともきょうでおわかれです。ソウルスタイルの展示はなくなりますが、 102日間ここに出現していた現実はすべて、私たちの身の回りに、手をのばせばすぐ届くところにあるものばかりです。6万人ちかい入館者のすべてが、これからもそれぞれのソウルスタイルをつづけてゆくことをねがって!

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    ※このE-Newsは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』 を利用して
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      http://www.mag2.com/ (マガジンID:0000086722)

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編集・発行:2002年ソウルスタイル・プロジェクト・チーム 

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