国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別展「自然のこえ 命のかたち-カナダ先住民の生みだす美」

自然のこえ 命のかたち-カナダ先住民の生みだす美

展示概要

多様な環境から生まれるカナダ先住民の美のかたち

多様な環境が広がるカナダでは、古来さまざまな文化が形成されてきました。 石器や土器などの考古資料をはじめ、美しい服飾品、儀礼用仮面などカナダ文明博物館が誇る約200点の資料が日本で初公開されます。 先住民たちの世界観が反映された表現力や美的センスをお楽しみください。

■第1部

カナダ文明博物館の国際巡回展「カナダの先住民族」は、カナダ先住民の世界を①「ハンターと戦士の世界」(平原地域と高原地域)、②「サケと儀礼の民の世界」(北西海岸地域)、③「極限に生きる人びとの世界」(極北地域と亜極北地域)、③「五大湖の農耕民の世界」(東部森林地域)の 4つに分け、各文化領域を代表するさまざまな衣類や道具、儀礼具、アート作品を紹介します。 カナダ先住民がつくりだしてきた豊ですばらしい芸術性をみることができます。

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カナダ文明博物館

①「ハンターと戦士の世界」(平原地域と高原地域)

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平原地域の先住民の子供用モカシン
(カナダ文明博物館資料)

②「サケと儀礼の民の世界」(北西海岸地域)

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北西海岸先住民の額飾り
(カナダ文明博物館資料)
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北西海岸先住民のワタリガラスが彫り込まれたシロイワヤギの角製のスプーン
(カナダ文明博物館資料)
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北西海岸先住民の木箱
(カナダ文明博物館資料)

③「極限に生きる人びとの世界」(極北地域と亜極北地域)

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イヌイットのビーズで飾られた女性用上衣
(カナダ文明博物館資料)
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イヌイットのセイウチ牙製の雪めがね
(カナダ文明博物館資料)
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イヌイットのアザラシの皮で作った浮き
(カナダ文明博物館資料)

④「五大湖の農耕民の世界」(東部森林地域)

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五大湖周辺地域の先住民イロコイのパイプ、500~600年前のもの
(カナダ文明博物館資料)
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五大湖周辺地域の先住民のカメを彫ったお守りもしくは小像、オタワ渓谷出土
(カナダ文明博物館資料)

写真で見る極北地域と北西海岸地域の自然と人

カナダには、極北に広がる寒冷ツンドラ地域、北西海岸の温帯性の森林地域、見渡すかぎり広がる平原地域、針葉樹林が広がる亜極北地域などまったく異なる自然環境が存在しています。
多様な自然環境とそこで営まれる人びとの生活の様子を、写真や動画などで紹介し、カナダの大自然が直面している環境問題やそこに住む人びとの社会変化を伝えます。

■第2部

⑤「激動の45年-カナダ・イヌイット再訪」では、カナダの極北地域の自然と社会を1960年代とその約40年後に朝日新聞者の記者が撮影した写真で紹介します。 ⑥「神話の記憶-カナダ北西海岸にて」では、北西海岸地域の自然と人について赤阪友昭氏が撮影した写真で紹介します。

⑤「激動の45年-カナダ・イヌイット再訪」(極北地域の写真)

本多、藤木が撮影した1960年代のカナダ・イヌイットの生活と環境の写真と2008年に武田が撮影した同じグループの現在の生活と環境の写真を展示します。極北地域の社会や環境の変化を知ることができます。

⑥「神話の記憶-カナダ北西海岸にて」(北西海岸地域の写真)

写真家赤阪友昭が撮影した最近の北西海岸地域の自然や動物、人についての感動的な写真を展示します。

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極北の海岸[撮影:岸上伸啓]
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イヌイットのハンターたち[撮影:岸上伸啓]

アートにみる先住民の活力-イヌイットと北西海岸先住民のアート

かつてエスキモーと呼ばれたイヌイットと、北西海岸先住民は1960年頃から版画や彫刻を通して彼らの世界観や生活、身近な動物、自然などを描き出し、芸術性に富んだ独特の作品を生み出してきました。
そこには驚くほどの独創性とバリエーションがみられるとともに、人間と動物の関係などモチーフのなかには共通性が潜んでいます。建築物や服飾品、工芸品などさまざまなモノや場面で垣間見ることができるそのすばらしい芸術性を、ふたつの地域のアート作品やモノによってご覧いただきます。

■第3部

トーテム・ポールをはじめとする北西海岸先住民のアート。狩猟や日常生活の情景を表したイヌイットの版画や彫刻。 これらのアートは、古くから培われてきた技術や物語に基づきながらも、20世紀の半ばに、彼らが経験した急速な社会・文化の変化の波の中から立ち現れてきました。 そこには、苦難の歴史、その苦しみからの復活、そして、未来への希望が込められています。

⑦イヌイットのアート

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版画 「夏のフクロウ」(国立民族学博物館所蔵)
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版画 「誇らしげな父親」(国立民族学博物館所蔵)
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版画 「捕鯨」(国立民族学博物館所蔵)

⑧北西海岸先住民のアート

1960年代から制作が始まった北西海岸先住民の版画とともに、木製の箱や仮面などを展示します。

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家紋が施されたハイダのマント(オールド・マセット、2006年)[撮影:岸上伸啓]
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オールド・マセットでのハイダのポトラッチ(2006年)[撮影:岸上伸啓]
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トーテム・ポールの建立(2006年)[撮影:岸上伸啓]

北西海岸先住民の版画には、独特な幾何学模様でワタリガラスやサンダーバードを描き出しています。

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シルクスクリーン
「4枚のひれをもつシャチ」
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シルクスクリーン 「鮭」
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シルクスクリーン 「ポトラッチに行く」