国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別展「深奥的中国ー少数民族の暮らしと工芸」

ご挨拶

2008年、中国ではじめてのオリンピックが北京で開催されます。アジアの大国、中国の存在感は、国際政治、国際経済のなかで急速に大きくなりつつあります。そのひとつのピークになるであろう2008 年春に、国立民族学博物館では、中国をテーマとする特別展を開催することにいたしました。
日本に入ってくる中国についての情報は、政治経済が中心です。政府高官の動向や経済の状況、あるいは北京や上海などの大都市の繁栄。しかし、これらの情報は浅く一面的で、それだけでは中国を理解したとはいえません。中国には漢族と55の少数民族が暮らしていますが、政治経済を中心とするニュースだけでは、多民族が共生する国家としての顔はみえてきません。
チワン(壮)族という民族がいます。東京都の人口を超える1618万人という人口を擁する中国最大の少数民族です。そのほとんどが中国西南部の広西壮族自治区に居住し、おもに農業をいとなんでいます。そこには特徴的な高床式の住居がみられます。チワン族のほかにも中国西南部には、独自の文化をもつ民族がたくさん暮らしています。生きている象形文字といわれるトンパ文字をもつナシ族、銀の装身具をまとい色鮮やかな刺繍の伝統をもつミャオ族、巧みな漆塗り工芸品をつくるイ族など、各民族は多彩な自然、悠久の歴史のなかでゆたかな文化をはぐくみ、民族の知恵、知識を生み出してきたのです。また、この地域の民族は中国文明の周縁地域にあって、漢文化を取捨選択しながら受容してきました。
この展示では、チワン族の高床式住居を中心に西南中国少数民族の現在の暮らしを紹介するとともに、特徴ある各民族の服飾・工芸品などを通じてそのゆたかな文化にふれていただきたいと考えています。
グローバル化にともない、外部との交流が激増するなかで大きな変革期を迎えている中国の今を、とりわけ諸民族がになう多様な文化を間近に感じていただきたいと願っています。

実行委員一同