国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別展「みんぱくキッズワールド:こどもとおとなをつなぐもの」

みんぱくキッズワールド:こどもとおとなをつなぐもの
男の子コンセプト女の子

子どもと大人がともに見たこと、考えたこと、感じたことをお互いに語り合う機会をつくる空間
ようこそ「みんぱくキッズワールド」へ
ラクダの放牧をする少年・ケニア
竹馬遊び・ベトナムの白タイ族
竹馬遊び・ベトナムの白タイ族
弩弓の練習・中国雲南

21世紀をむかえ、世界はますますその距離を縮めている。新聞やテレビ、最近ではインターネットが、毎日新しい世界の情報を我々に届けている。そこには、平和な国や地域の様子ばかりでなく、戦争や紛争、災害に苦しむ人たちの様子もうつしだされていることに気がつくだろう。そんな世界中のさまざまな様子の中に、我々が忘れてはならない存在がある。それは、どんな社会、どんな環境の中にも見える次の世代をになっていく子どもの姿である。逆に、子どもの姿が見えるということは、その社会に将来が存在するということでもあるだろう。

最近になって、子ども学(Child Science)が新たな学際的分野として登場してきた。国内外で、子ども学に関連した大学や大学院の設置が進み、21世紀における新たな課題としての子ども学の位置づけが確立しつつある。現在の子ども学に求められているものは、子どもをどの様に捉えるか、すなわち子どもの存在の意義を、哲学や倫理学的な視点で考察していくということ、現代社会の中で生じている「子どもの問題」、例えば貧困を原因とする児童労働、児童売買や児童買春といった子どもの商品化、犯罪の低年齢化といった現象の原因を明らかにし、それらへの対処法や予防方法を確立するための実践的取組み、子どもに関わる社会的な施設や制度を、子どもの立場に立って、どのように整備していくか、ということなどがあげられる。

実は、子ども学において課題とされている問題について、地域コミュニティのレベルでいち早くそれらに気がつき、その存在を記述してきたのが人類学の分野なのである。そして、国立民族学博物館(民博)においても、子どもについて考える研究は少なからず行われてきた。その代表的なものが、昭和57年から59年にかけての共同研究プロジェクト「子ども文化の文化人類学的研究」である。40名を越える研究者の参画によって展開された研究会では、諸民族文化の中における子ども文化のありかたについて、その構造と形成の過程を文化人類学、民族学的フィールド調査の結果にもとづき比較検討すると同時に、現代文明の中における子ども文化のありようについての課題が検証された。この時すでに研究者達は、文化変容の中で「近代化」の影響を受けていく世界各地の子どもたちの姿を描き出していた。

民博の研究活動の中に埋め込まれていた子どもの研究というDNAは90年代に入り、再び発現していくことになる。それは博物館という民博のもう一つの顔をとおしての営みであった。資料を保存し展示するという従来の博物館の機能に加えて、教育という役割が博物館に与えられ、博物館教育の目的や手法についての議論が盛んに行われた。2000年に民博から出版されたSER『新しい展示技法の開発と子どもと博物館のコミュニケーションに関する研究』はこうした文脈の中でうまれてきた研究成果と言えるだろう。またこの時期には、展示場の中に「ものの広場」や「学習コーナー」といった教育活動の場が設けられると同時に、博物館の外にその営みを広げていく試みがなされてきた。現在、運用されている「みんぱっく」はその代表的な例と言えるだろう。

こうした様々な研究や試みと軌を一にしながらも、子どもと民博の新たな関係を築くための第一歩として今回の特別展は企画された。

子どもを大切に思う気持ちは世界共通である。子どもをとりまく環境が地球規模で変わりつつある現代において、大切なのは子どもと大人の双方が子どものことをよく知ろうとすることである。まずは今回の特別展で、子どものことを考えることから始めてみよう。


ナーダムの競馬の練習・モンゴル
植物の茎を使った伊達めがねで遊ぶ・中国雲南
馬は子供にとっても日常の乗りもの・モンゴル
母と子ども・インド
観覧料:一般420円(350円)高校・大学生250円(200円)小・中学生110円(90円)
※( )は20名以上の団体料金、および割引料金です。※上記料金で常設展も御覧になれます。
※割引料金対象者(要証明書)・・・大学等(短大・大学・大学院)の授業での利用、3ヶ月以内のリピーター、満65歳以上
※毎週土曜日は、小・中・高校生は無料。※5月5日(金・祝)はすべての方が無料。