企画展「伊勢の染型紙‐映像と実物にみる匠の技‐」
場所:国立民族学博物館 本館展示場内
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和紙を柿渋で貼りあわせた渋紙に、彫刻刀で模様を彫った染型紙を使って布面に糊を置き、その後に色染めをする型染は、日本の伝統的な染色技法です。江戸時代には型染が日本の各地でおこなわれ、染めあがった布はおもにキモノの布地としてもちいられてきました。型染に欠くことのできない染型紙は、伊勢(三重県)の鈴鹿市白子(しろこ)と寺家(じけ)がおもな産地で、伊勢で彫られた染型紙は各地の染屋に供給されて、「伊勢型紙」の名でもてはやされてきました。明治時代以降の日本人の衣服の洋風化にともない、型染のキモノの需要は次第に減少し、必然的に「伊勢型紙」の需要も減少していますが、その精緻な製作技術の伝統は、21世紀の今もしっかりと継承されています。
国立民族学博物館では、開館当初の1978~1980年に、はじめての映像資料作成プロジェクトとして、本館スタジオ、ならびに鈴鹿市白子と寺家で、国指定の重要無形文化財保持者(人間国宝)をはじめとする方々の縞彫、突彫、錐彫、道具彫などの彫刻技術と、彫刻した型紙を補強するための糸入れ技術の映像取材おこなうとともに、そのさいに製作された型紙を収集しました。
本企画展では、それらのビデオ映像と「伊勢型紙」を、江戸時代から明治時代頃に使われていた古い「伊勢型紙」や見本帳、国指定の重要無形文化財保持団体である伊勢型紙技術保存会の方々によって製作された現代の「伊勢型紙」、彫刻刀その他の型紙製作用具、「伊勢型紙」を使って染められた布やキモノとともに展示します。さらに、関連資料として、現代のプリント技術で染められた反物やキモノもあわせて展示し、「伊勢型紙」の精緻な匠の技とともに、現代社会から急速に姿を消しつつある手仕事の実情を紹介します。