みんぱく世界の旅
- アメリカ先住民ホピ(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年1月17日刊行
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伊藤敦規(国立民族学博物館助教)
願い込めて「ソーシャルダンス」
乾燥地での農耕にとって雨は本当に貴重です。アメリカ先住民ホピの人々の日常生活は雨ごいのいのりの連続です。今回は女性の儀礼や衣装を見てみます。
大きな頭飾りは積乱雲を表していますトウモロコシなどの農作物を育てるための降雨・降雪・地中の湿気の保水の願い、動植物へのいのり、近隣の先住民集団への礼賛など、人間が中心に行う儀礼をまとめて「ソーシャルダンス」と言います。「バファローダンス」「トウモロコシダンス」「水の乙女のダンス」などたくさんの種類があります。毎年決まった時期に開催されるため、ホピ語では「季節のおどり」という言葉が使われます。また、男性が司るカチーナ儀礼に対し、演者に女性が含まれることから「少女のダンス」と呼ばれることもあります。
ソーシャルダンス(水の乙女のダンス)の衣装ですたとえば、バファローダンスは毎年1月半ばごろに開かれます。農作物が春の発芽に必要となる地中の湿気が冬の間に十分にたくわえられるよう願い、そして冬の間の雨や雪の使者と考えられているバファローへいのりをささげることが目的です。
意味がこめられた衣装
小学生低学年ごろから高校生くらいの女性ダンサーは、トウモロコシの実をひいた白い粉末を顔に塗り、(1)ししゅうがほどこされた白のドレスを着て(2)白色無垢の帯をしめ(3)白いキルトをかたからまとい、胸元はトルコ石の装飾品でかざります。頭には(4)おうぎ状に配したワシの尾羽と(5)オウムの胸毛の束を付け、手首には青い毛糸をよった輪を巻き、手には(6)花を付けた小さなかごと(7)花とワシの羽のついた指揮棒を持ちます。
足下は(8)白の革ぐつをはき(9)スカンクの毛皮で巻きます。これらの衣装には文化的な意味がこめられています。(1)(2)(3)はけがれのない人生と雪の積もった畑を、(4)(5)は降雨と降雪へのいのり、(6)(7)は春の訪れ、(8)(9)雪を意味します。
着物や儀礼だけではなく、女性のおどりの動作も、長くのばした髪の毛も、降雨や雨雲の動きを模しています。髪型も個人的なおしゃれやファッションとしてではなく、雨雲から地表に向けてまい落ちる雨を伝統的に表しているのです。
グランドキャニオンの物見の塔に描かれた、ホピの女性の伝統的衣装。右はチョウチョウの髪形をしています一口メモ
「チョウチョウ髪形」
ホピの女性の髪は長く美しい。未婚の女性は頭の両側で結い、それはチョウチョウ髪形と呼ばれます。映画「スター・ウォーズ」に登場するレイア姫や歌手のビョークなどがこれにならった髪形をしたことで有名です。シリーズの他のコラムを読む
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