国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

アフリカ発掘調査(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年3月14日刊行
竹沢尚一郎(国立民族学博物館教授)
鉄を溶かした「たたら」
鉄鉱石の宝庫 アフリカのメマ

私はマリという国で発掘をしていますが、その北部にメマという土地があります。今から1500年ほど前に、ガーナ王国というアフリカ最古の王国が誕生したところです。

そこは首都から500キロメートルほどはなれているので、夜明け前に出発します。途中までは快適なのですが、残りの半分は舗装もない悪路。トラックが道をえぐっていくので、それをさけて道のない原野を、車のわだちをたどって走ります。

しかも最後の100キロメートルは家1軒ありません。こんなところで道に迷ったり、車が故障したりしたら、野獣におそわれるか、盗賊に身ぐるみはがれるか、どちらかだな。まるで「インンディ・ジョーンズ」の世界ではないか。その思っていると無事にメマにつきました。

さっそく翌朝から、遺跡を探してまわります。砂漠に近いので木もあまりなく、遺跡は盛り土になっているので遠くからよく見えます。遺跡の表面には土器のかけらがあり、それを見れば、新石器の遺跡か鉄器時代の遺跡かわかります。

アフリカ式製鉄法

鉄鉱石の宝庫であるメマには、鉄を溶かした跡がたくさんあります。どうやって鉄を作るかわかりますか。まず、粘土を丸く積み上げて、なかに木炭と鉄鉱石を層にして入れていきます。2メートルぐらいの高さになると、粘土で上部をふさぎます。そして下部の穴にふいごをつけ、空気を送って2晩燃やし続けると鉄ができるのです。

こういう装置をたたらといいますが、メマには今もたたらや鉄を溶かした跡がたくさんあります。500か所以上も跡がある遺跡があることもわかりました。鉄は農具や武器になります。伝承によると、ガーナの人々は鉄の武器で戦ったので、鉄を持たない人々を打ち破ったといいます。メマはガーナ王国の武器製造工場だったのです。


鉄を溶かした残滓(残りかす)を踏む子どもたち

今から3000年前の土器
 

一口メモ

こんな粘土で作った装置で良い鉄ができるはずがない。そう思うかもしれません。しかし、200年ほど前にイギリスで機械式の製鉄所ができるまで、世界中で見られたのはこのたたらでした。切れ味するどい日本刀もたたらの鉄で作られたのです。

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