みんぱく世界の旅
- アフリカ発掘調査(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年3月21日刊行
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竹沢尚一郎(国立民族学博物館教授)
マリの歳発掘で新たな発見
私たちが発掘した巨大な建造物私たちは10年前から、マリのガオという都市で発掘をおこなってきました。ここには世界遺産に登録されているアスキア大王の巨大な墓があり、その近くには空き地がありました。その空き地の表面に、大きな石が顔をのぞかせていたのです。
ここでは約60年前にフランスの考古学者が発掘をし、新しい建物の跡だと断言しました。そのため、それ以来、発掘はおこなわれなかったのです。ところが私たちが表面の石をたどっていくと、いくつか列があることがわかりました。列であるからには、大きな建物の壁であるにちがいない。ここを掘ってみよう。私と現地の協力者であるシセ君の考えは、見事に一致したのです。
発掘チームで記念撮影そこを掘っていくと、出てきたのです。大きな石造りの壁が。壁の端は地中に隠れていたので、さらに掘り広げていくと、巨大な建物の跡であることがわかりました。全長約50m、奥行き12.5mの建物で、壁の厚さは1.2mありますので、おそらく高さは10mをこえていたでしょう。
さらに掘っていくと、別の小さな建物があらわれ、そこには浴室も、もうけられていました。また、砂漠を越えて運ばれてきた、たくさんのガラス製ビーズや、2000点を超える銅製品、100点あまりのガラス製容器など、貴重な品々も発見されたのです。
この建物には水浴場もついています年代を知るには、放射性炭素測定という方法をもちいますが、これによって9世紀半ばに建設され、10世紀半ばまでに放棄されたことがわかりました。また、これほど巨大な建物を建てたのは、王などの権力者であったと考えられます。貴重な品々が出土したことを見ても、王宮に間違いないでしょう。私たちは発掘をつづけるなかで、見事、西アフリカ最古の王宮を発掘することに成功したのです。
一口メモ
私たちは5年ほどガオで発掘をしましたが、内戦が始まったために、発掘はできなくなってしまいました。一刻も早く平和が回復し、再び発掘ができるようになることを、私もマリの人びとも心から願っているのです。
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