国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

オセアニア(1) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年4月4日刊行
印東道子(国立民族学博物館教授)
特殊なカヌーで大航海

オセアニアで海を移動するのに使われたアウトリガー・カヌー

オセアニアという名前を聞いたことはありますか?日本のはるか南に広がる広い海の世界、太平洋地域のことをさします。そこには、オーストラリア大陸のほかに、たくさんの島があります。グアムやタヒチ、イースター島などは日本でもよく知られていますね。

17、18世紀には多くのイギリスやフランスの船がオセアニアに探検にやってきました。そこに島があることを知らなかったからです。ヨーロッパ人たちは、自分たちが「発見した」と思った島に、たくさんの人間が豊かに暮らしていたのでおどろきました。ヤシの木やバナナには一年中、実がなって、人々も楽しそうに暮らしていたので、楽園のようだと報告されました。


カヌーの外側を削るヤップ島の男性

この人たちはどこから、どうやってきたのでしょう?言葉からは東南アジアの島々から海をこえてやってきたことがわかっています。しかし、ハワイやニュージーランドのように、遠くはなれた島へはどうやって行ったのかとても不思議です。泳ぐのには遠すぎますし、男も女もわたらなければ子孫を残せません。舟を使って移動したのは確かです。

くぎは一本も使わず

日本の縄文人は、太い木をくりぬいて丸木舟を作りましたが、オセアニアの人たちは、転覆しにくいアウトリガー・カヌーを使っていました。金属がなかったので、石や貝の道具で木をけずって作り、くぎは一本も使っていません。カヌーには、タコノキの葉を編んで作った大きな三角形の帆をつけたので、風を利用して進むことができました。これが遠くの島まで移動できた理由の一つです。

ヤップ島から沖縄までやって来たチェチェメニ号というアウトリガー・カヌーの本物が、みんぱくのオセアニア展示場の中央に置いてあります。どうやってくぎを使わないで作ったのか観察してみてください。


カヌーはくぎを一本も使わず作ります
 

一口メモ

アウトリガー・カヌーは、船体の片側にアウトリガー(浮き木)を張り出すようにつけたものです。長距離を航海するときは、帆で風の力を利用して前進します。東南アジアからオセアニアで、広く使われていました。

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