国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ルーマニア(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年6月6日刊行
新免光比呂(国立民族学博物館准教授)
村ごとにデザインちがう民族衣装

伝統的な衣装に身を包んだ若者たち

ルーマニアの人たちが身につける民族衣装は、はなやかな女性用の衣装と、少し地味ながらも実際的な男性用の衣装があります。女性用衣装は、巻きスカート、ブラウス、ベスト、スカーフを基本としています。一方、男性用衣装の基本は、ズボン、シャツ、ベスト、帽子です。

女性の衣装のなかで最も特徴的で美しいのは、ザディエと呼ばれる巻きスカートです。このザディエは、現在でも村々の家庭にある機織り機で農作業のひまな時期に、主婦が織り上げるものです。以前は2枚のザディエを身につけたそうですが、現在では1枚だけをエプロンのように前側に着ることが多くなっています。


村の路上で輪になっておどります。

民族衣装は村ごとにちがっていて、それが村人のほこりというのが、お決まりの言い回しです。それだけ衣装が変化に富んでおり、それが村の特徴にもなっているのです。とくにザディエのデザインは横しまの色の組み合わせとしまのはばのちがいで区別され、未婚、既婚、中年、老年など年齢と社会的な立場ごとに異なっています。若い人の色は明るく、年齢が上るにつれて地味な色になります。

今は晴れ着として

これらの民族衣装は、残念ながら現在の都市の日常生活からは消えうせてしまいました。農村でも高齢者だけが日常的に着ているにすぎません。しかし、祭日ともなれば、晴れ着として多くの人が民族衣装を着て路上に出てきます。


音楽とともにおどるペアダンス

社会主義時代から始められた伝統芸能フェスティバルには、現在でも各村から代表チームが、それぞれの村に伝えられた民族衣装を身につけて参加します。この日ばかりは、かつての伝統がよみがえったようでもあり、観光客の期待を満たすものになっています。

 

一口メモ

ルーマニアは1989年までソ連(現ロシア)と同じ社会主義という体制の国でした。農村では農業集団化といって、土地の利用を個人ではなく国家による集団利用にしていました。良いか悪いかは別にして、近代化が進んで生活が便利にはなりました。
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