国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

カザフスタン(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年9月26日刊行
藤本透子(国立民族学博物館助教)
赤ちゃんぐっすり伝統的なゆりかご

ゆりかごにねむる赤ちゃん

赤ちゃんはねむっている時間が長いので、ねむる場所はとても大切です。このため、世界のどの地域でも赤ちゃんのねる場所にはいろいろな工夫がこらされてきました。カザフスタンでは伝統的に、木で作ったゆりかごに赤ちゃんをねかせます。

ゆりかごをよく見ると、赤ちゃんをねかせる板にも、敷布団にも、不思議な穴が開いています。この穴はちょうど赤ちゃんのおしりの位置にくるよう作られていて、おまるのような容器をはめて使います。はいせつ物はすべておまるに落ちる仕組みなので、赤ちゃんはねむっている間におもらししても、ぬれたりしません。だから、おしめを使うのは、赤ちゃんが起きてお母さんにだかれている時だけです。


ゆりかごのまわりを火でいぶして悪霊を追い払います。

ゆりかごは、赤ちゃんが生まれた時に、母方の親戚がもってきてくれます。おうちに古いゆりかごがあれば、それを使うこともあります。代々使われ続けたゆりかごは、赤ちゃんを守ってくれるとカザフ人は言います。初めて赤ちゃんをねかせる前には、小枝に火をつけてゆりかごのまわりをいぶします。こうすると目に見えない悪い霊が火を恐れて退散し、赤ちゃんがよくねむれると信じられているからです。

かつて、カザフ人が家畜とともに移動しながら生活していたころには、ゆりかごに赤ちゃんをねかせたまま、だきかかえ、ラクダや馬に乗って旅をしました。ゆりかごには赤ちゃんへの思いと暮らしの知恵がたくさんつまっています。


赤ちゃんの足の間に、木や動物の骨で作ったパイプ型の管をはさんでねかせると、おしっこは管をとおって落ちます。
 

一口メモ

今ではベビーベッドを使う人も多くなりましたが、伝統的なゆりかごも根強い人気があり、バザールでもたくさん売られています。

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