国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

中国(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年4月23日刊行
卯田宗平(国立民族学博物館准教授)
魚種が豊富なウ飼い漁

ウ飼い漁で利用されるカワウは、水にもぐると、その時にその場所でもっともとりやすい魚をつかまえます。そのため、カワウが捕った魚を船の上ではきださせると、フナやドジョウ、ナマズ、ギギなど実にさまざまな魚がみられます。

以前、私は江西省ポーヤン湖のウ飼い漁師である胡さんと一緒に漁に出て、その日にとれた魚をすべて調べたことがあります。すると、1日で40種以上の魚をとっていることがわかりました。一度に多くの種類がとれたことにおどろきました。


水中で魚をくわえたカワウは、水面に浮かび上がってから頭を上に向けて魚を丸のみします。

ウ飼い漁でとれたハゲギギを買う人たち。価格は500グラムで300円ぐらいです。
 

さらにおどろいたことがありました。それは、胡さんの舟が港に到着すると淡水魚を求める仲買人や農民が舟の上までかけ上がってきて、一気に魚を買い取っていったことです。またたく間に売り切れました。


コイを使った漁師さんの手作り料理。おいしかったです。

仲買人は胡さんから買った魚を食堂や魚屋、干し魚加工工場などにおろします。農民たちは魚を自宅に持ち帰り、しょうゆ煮込みや姿蒸し、トウガラシとサンショウのいため物などにして食べます。

海から遠く離れたポーヤン湖の周辺では、さまざまな淡水魚をいろいろな方法で食べる文化が根づいています。そのため、地元の人たちは湖沼や河川でとれた淡水魚を求めているのです。

漁業という仕事は、たくさんの魚がとれたとしても、それらの魚を買ってくれる人がいなければ成り立ちません。1回の操業で多くの魚種がとれるウ飼い漁は、さまざまな淡水魚を求める食文化が背景にあるからこそ仕事として成り立つのです。

 

一口メモ

中国のレストランには淡水魚の料理がたくさんあります。淡水魚はどろくさいと言われますが、香辛料を大量に使うので気になりません。

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