連続講座「みんぱく×ナレッジキャピタル -世界の天然素材-」
- 開催日:2015年10月22日(木)、10月28日(水)、11月4日(水)、11月18日(水)、12月2日(水)、12月16日(水)、12月23日(水・祝)
- 時間: 19:00~20:30(開場18:30)12月23日の展示ツアーは13:30~15:00
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場所:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F アクセスマップ[PDF]
国立民族学博物館 ※12月23日のみ - 定員:各回50名(12月23日は定員30名)中学生以上/要事前申込/先着順
- 参加費:500円(1ドリンク代)※第1回~第6回
- 主催:国立民族学博物館、一般社団法人ナレッジキャピタル、株式会社KMO
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お問い合わせ:一般社団法人ナレッジキャピタル ナレッジキャピタルホームページ
電話:06-6372-6530(営業時間10:00~17:00)/e-mail:info@kc-i.jp
趣旨
20世紀以降、工業化や情報化が進むにつれ、世界じゅうの手仕事が失われたり喪失の危機にさらされたりしています。その背景のひとつとして、大量生産に適した近代的素材が普及し、手仕事を支えてきた天然素材にとって替わってきたことがあげられます。素材の個性と役割を知ることは、世界の手仕事をより深く理解し伝えるための第一歩と考えてよいでしょう。
今回の講座では、みんぱくに所属する7名の研究者がそれぞれの研究をふまえ、世界のくらしに息づく天然素材とものづくりについて紹介します。そのことをとおして、素材の個性と役割を学ぶとともに、時代をとおした素材の変化や地域のなかでの重要性を学んでいきます。
講座情報
第1回 10月22日(木) 「世界の鳥と人とのかかわり――羽の美しさを求めて」
講師:池谷和信[国立民族学博物館・教授]
会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名
祭礼用頭飾り
人類は、さまざま目的のために鳥の羽を利用してきました。羽ペン、矢羽、布団の素材、そして女性が身につける装飾品などです。本講座では、世界の諸民族がどのような鳥の羽を好み、いかに利用してきたのかを展望したいと思います。複数の羽を組み合わせる鮮やかな装身具、羽の過度の利用で絶滅した鳥などを紹介しながら、私たちと鳥との持続的なつきあい方について考えてみます。
《講師プロフィール》
人類学、地理学専攻。アフリカを中心に、日本を含むアジア、シベリア、アマゾンなど世界の狩猟採集文化、生き物と人のかかわりから世界の文化誌を研究している。主の著者に『世界のビーズ』(千里文化財団、2001年)、『人間にとってスイカとは何か』(臨川書店、2014年)など。
第2回 10月28日(水) 「日本の漆器、世界の漆器」
講師:日髙真吾[国立民族学博物館・准教授]
会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名
ミャンマーの漆器工房
光り輝く蒔絵や螺鈿が施された漆器はかつてヨーロッパの人びとを魅了し、それらが「japan」とよばれたことはよく知られています。また、そうした調度品や高級漆器以外にも、漆は日本の生活、文化を支えてきました。庶民が日常に使う食器や、建築や仏像の製作に欠かせない素材として、漆はさまざまな場面で用いられてきました。
一方、漆の文化は日本をはじめとする東アジアだけではなく、ミャンマーなど東南アジアにもその広がりを持っています。
そこで、本セミナーでは、人びとの生活や文化と漆の関係について、ひろく考えてみたいと思います。
《講師プロフィール》
東海大学文学部史学科日本史学専攻卒業(1994年)。博士(文学)(東海大学2006)。元興寺文化財研究所研究員を経て、現在、国立民族学博物館文化資源研究センター准教授。主な著書に『災害と文化財』(国立民族学博物館、2015年)、『女乗物 その発生経緯と装飾性』(東海大学出版会、2008年)、編著書に『記憶をつなぐ―津波被害と文化遺産』(千里文化財団、2012年)、『博物館への挑戦-何がどこまでできたのか-』(園田直子と共編 三好企画、2008年)がある。
第3回 11月4日(水) 「毛皮――防寒とファッションと」
講師:佐々木史郎[国立民族学博物館・教授]
会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名
クロテンを捕る猟師
昨今、毛皮に対する風当たりは冷たく、野生動物の毛皮を身にまとうことについては、動物愛護団体や自然保護団体から厳しい視線が向けられています。とはいっても、動物の毛皮や革は防寒素材として、あるいはファッションとして、人工素材では再現できない機能と美しさを有しています。人類の毛皮活用の歴史を簡単に振り返りながら、野生動物の保護や生態系の維持と、毛皮の機能と美の活用との両立を考えます。
《講師プロフィール》
東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。国立民族学博物館助手、大阪大学助教授、国立民族学博物館助教授を経て、同教授。専攻は文化人類学。主なフィールドはロシア極東地方とシベリアで、先住民族の狩猟とトナカイ飼育の生態と、彼らの近世、近代の歴史を研究する。主な著書に、『北方から北交易民—絹と毛皮とサンタン人』(日本放送出版協会、1996年)、『シベリアで生命の暖かさを感じる』(臨川書店、2015年)など。
第4回 11月18日(水) 「木でつくられる挽物――「木材の工芸的利用」の探究」
講師:木村裕樹[国立民族学博物館外来研究員・龍谷大学社会学部非常勤講師]
会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名
足踏み式のろくろを使って茶道具の香合をつくる
ろくろや旋盤を使い材料を回転させ刃物で削りだしたものを挽物といいます。食卓のお椀をはじめさまざまな器がそうですが、それだけではありません。鍋のつまみにスプーンの柄、引き出しの取っ手にテーブルの脚、ミシンの糸巻におもちゃのパーツ等々。ちょっと目立たない存在ですが、じつは日本の近代化とも深くかかわってきました。そんな挽物を主役に据えてみましょう。職人の手仕事へのこだわりや素材を活かした美しさの表現などを紹介し、木でつくられる挽物の魅力に迫ります。
《講師プロフィール》
専門は民俗学、民具研究。日本で木地屋を中心に職人の道具や技とそれにまつわる伝承について比較研究している。国立民族学博物館のアチックミューゼアム・コレクションをはじめ国内外の民族学標本資料の調査にも従事。主な論文に「会津漆器産地における「手挽き轆轤」の一系譜」(『京都民俗』30-31: 133-141、2013年)など。
第5回 12月2日(水) 「南米アンデス文明における金の利用」
講師:関雄二[国立民族学博物館・教授]
会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名
紀元前800年頃にさかのぼるアンデスの金製品
インカ帝国に代表される南米アンデス文明は金製品の製作で有名です。最古の金製品を発見した経緯のほか、いろいろな古代の金製品を紹介します。またスペイン人によるインカ帝国征服と金の関係、そして金製品を求めて現在も続く遺跡の盗掘の状況を報告します。
《講師プロフィール》
1956年東京生まれ。国立民族学博物館民族社会研究部教授ならびに総合研究大学院大学教授。専攻はアンデス考古学、文化人類学。 1979年以来、南米ペルー北高地において神殿の発掘調査を行い、アンデス文明の成立と変容を追究するかたわら、文化遺産の保全と開発の問題にも取り組む。単著として『アンデスの考古学』(同成社)、『古代アンデス 権力の考古学』(京都大学学術出版会)、『アンデスの文化遺産を活かす:考古学者と盗掘者の対話』(臨川書店)、共編書として『文明の創造力』(角川書店)、『アメリカ大陸古代文明事典』(岩波書店)、『古代アンデス 神殿から始まる文明』(朝日新聞社)がある。
第6回 12月16日(水) 「インドの野蚕――その特徴と魅力」
講師:上羽陽子[国立民族学博物館・准教授]
会場:CAFE Lab. グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F/定員:50名
室内に吊られたカゴの上で飼養されるエリサンの幼虫(2014年アッサムにて撮影)
多くの天然繊維のなかで、一つの繭から均一の糸がおよそ1200メートルうみだされる絹は、唯一の長繊維として珍重されてきました。絹を分泌する絹糸昆虫は世界に10万種あるともいわれ、カイコガ科で桑葉を食べて人に飼養される家蚕と、ヤママユガ科など桑葉以外を食べる野生の野蚕にわけることができます。本セミナーでは野蚕の宝庫インドに注目し、ムガ、タッサー、エリなど家蚕にはない野蚕糸の色や風合い、希少性から半飼育化が進んでいる現状について紹介します。
《講師プロフィール》
専門は民族芸術学、染織研究。インドを中心に南アジアで手仕事の調査をおこなっている。著書に『インド、ラバーリー社会の染織と儀礼-ラクダとともに生きる人びと』(昭和堂、2006年)、『インド染織の現場-つくり手たちに学ぶ(フィールドワーク選書(12))』(臨川書店、2015年)、監修に『世界のかわいい民族衣装』(誠文堂新光社、2013年)がある。
第7回 12月23日(水・祝) 民博展示ツアー「貝の魅力――その使用価値、装飾的価値、象徴的価値」
講師:飯田卓[国立民族学博物館・准教授]
会場:国立民族学博物館/定員:30名
みんぱくオセアニア展示場の「葬儀長の衣装」
風化しにくく、魅力的なかたちをもつ貝がら。海ですごした思い出として、貝がらを家に持ち帰る経験は、誰にもあるはず。貝がらは、世界各地で装飾品として、貨幣として、力を示すシンボルとして用いられています。
今シーズンの最終回は、みんぱくを会場として、オセアニア展示場を中心に貝のさまざまな利用方法をご紹介します。貝を愛(め)でつつ、人と自然のかかわりを考えてみてください。
《講師プロフィール》
マダガスカル山地部の人と樹木、同海岸部の人と海などの関わりを調査してきた。専門は生態人類学、文化遺産の人類学。著書に『身をもって知る技法』(臨川書店、2014年)、共編著に『マダガスカルを知るための62章』(明石書店、2013年)など。