小学二年の春、母親とふたり九州の天草という島を出て此花区の四貫島に来た。

「カネは人生に何を与えてくれるのか」─というのは、文化人類学者の小馬徹らが著した『カネと人生』（雄山閣刊）の帯にある問いかけである。

消費社会の住人にカネのない暮らしは想像しがたい。まして「地獄の沙汰もカネ次第」という言葉がある。

ドル札を身にまとった人形、それがわたしのエケコにいだくイメージである。というのも、最初の出会いがリオデジャネイロの土産物店でみつけたカネの亡者のような姿だったからである。

国立大学を卒業して三年、フリーターの道をえらんだ演劇青年のポケットの中。

以前、モノのやり取りを分配、贈与交換、再分配、市場交換の四つのタイプに分け、それを「交換の四角形」と表したことがある。

民博が所蔵する資料のなかには日本の郷土玩具が数多く含まれている。そのひとつに、大きな鯉を頭上に担った童子をモチーフにした土人形がある。