国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

ミュージアムと負の記憶――戦争・公害・疾病・災害:人類の負の記憶をどう展示するか  2015年10月20日刊行
竹沢尚一郎 編著 東信堂
【機関研究プロジェクト成果】

出版物情報

主題・内容

戦争・公害・災害、20世紀は悲惨な出来事の記憶に満ちている。ミュージアムはこれらの惨禍を記憶し、それに公的な意味を与えることを求められてきた。しかしミュージアムは、国家や公共団体が与えようとする意味の単なる媒体者ではない。どうすればミュージアムはこれらの出来事に複数の意味を与え、来館者を思索へといざなうことができるのか、を問う。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

アウシュヴィッツ、ヒロシマ、ミナマタ、悲惨な記憶を伝ええるこれらの場所は、同時に悲惨と戦う人間の営為を伝える場所でもありうる。ナショナリズムへと回収されることのない集団的記憶をかたちづくるのに、ミュージアムは貢献できるのではないか。その手がかりを探る。

目次

はしがき……………竹沢尚一郎
序章「フォーラムとしてのミュージアム」……………竹沢尚一郎
第I部 戦争の展示:複数形の展示は可能か
第1章 歴博「現代展示」と戦争認識 安田常雄
第2章 アウシュヴィッツをおとずれること……………アネット・ヴィーヴィオルカ
第3章 ミュージアムにおける暴力の文化史――ドイツ連邦軍軍事史博物館の構想とその実現……………ハンス=ウルリッヒ・ターマー
第4章 平和の聖地と悲惨のありか……………濱田武士
第II部 記憶の公共空間としてのミュージアム
第5章 「公害」をどう展示すべきか――水俣の対抗する二つのミュージアム……………平井京之介
第6章 ハンセン病療養所の保存――手段としての世界遺産……………田村朋久
第III部 自然災害による破壊をどう記憶していくか
第7章 トラウマを超えて――東日本大震災の展示と震災遺構の保存をめぐって……………竹沢尚一郎
研究ノート
カンボジアにおける復興と虐殺の記憶――シェムリアップ、アンコール遺跡、キリング・フィールド……………荻野昌弘
ベトナム戦争戦没者慰霊碑……………竹沢尚一郎
侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館(南京大虐殺記念館)……………伊東未来
心で感じるミュージアム――日本軍「慰安婦」歴史館……………平井京之介 西大門刑務所歴史館……………伊東未来
ホロコースト記念博物館(ワシントン)……………竹沢尚一郎
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター……………竹沢尚一郎