国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

転換期のミャンマーを生きる―「統制」と公共性の人類学  2020年3月20日刊行

土佐桂子、田村克己(編)

風響社
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

軍人支配から民政移管そして「アウンサンスーチー政権」へ。激動のミャンマーを、「統制」と「公共性」に注目し、長年の文化や社会の研究に基づく知見を生かし,過去からの分断でなく連続性の中から描き出す。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

ミャンマーの社会主義とは、軍政とは、民主化とは、人々にとって何だったのか、現代ミャンマーを知るための必読書。 執筆者それぞれの長年の現地調査に基づき、都市、農村、少数民族、周辺諸国との比較など、さまざまな視点からミャンマーの多面性を描き出している。

目次

 序章──「統制」と公共性研究について(土佐桂子)
●第Ⅰ部 統制のほころびと新たな公共性の行方
 一 「経験」された統制──社会主義時代における農村の調査(田村克己)
一 はじめに
二 監視と「自己統制」
三 お茶の「輪」と「親しい間柄」
四 「まとまり」としての村
五 個人的ネットワークの競合
六 おわりに
二 民主化運動における「対抗的公共圏」の成立過程(伊野憲治)
一 はじめに
二 一九八八年民主化運動の発端と公共性
三 八八八八学生決起、自由な討論の場と「ドー・アイェー(我らが大義)」の創出
四 クーデター、政党結成と「対抗的公共圏」の形成
五 総選挙・軍政の存続・憲法制定・民政移管・総選挙と課題
六 おわりに
三 軍統制下における農村の公共意識と宗教──上ビルマ村落の事例から(飯國有佳子)
一 はじめに
二 軍政期の農業政策にみる統制
三 浸透する国家権力
四 規律的権力によるリスクの自己責任化と「官製NGO」
五 村における集団形成
六 おわりに
四 ミャンマーにおけるフェイスブックと公共性の構築(テッテッヌティー)
一 はじめに
二 言論統制
三 情報統制
四 テインセイン政権の改革
五 おわりに
五 セキュリティ民営化とインフォーマルな国家統制(岡本正明)
一 はじめに
二 私的暴力装置(研究)の少なさ
三 警備業の定義
四 警備業の誕生と発展
五 警備会社、警備員の特徴
六 国家による警備会社、警備員の統制
七 警備業の自己統制化から国家統制へ?
八 おわりに
●第Ⅱ部 民主化の中の宗教──競合する公共性
六 仏教を結節点とした「つながり」とその変容(藏本龍介)
一 はじめに
二 出家者の反ムスリム運動
三 出家者の反ムスリム運動に対する批判
四 「法友」の台頭とマバタの対応
五 おわりに
七 民主化による新たな試練とムスリムコミュニティ(斎藤紋子)
一 はじめに
二 身分証明書をめぐる問題――ホワイトカードを利用した統制と排除
三 ムスリムコミュニティの新たな活動
四 ミクロなレベルでのムスリム・仏教徒関係
五 おわりに
八 説法会を核とする仏教公共性(土佐桂子)
一 はじめに
二 説法会とは何か
三 軍政時代初期の説法
四 テインセイン政権時代の説法
五 おわりに
●第Ⅲ部 マイノリティをめぐる統制と鼓動
九 “ガラスの多文化主義”と少数民族のパブリシティ(髙谷紀夫)
一 はじめに
二 ミャンマーの政治的文脈とパブリシティ
三 シャンのパブリシティの外延
四 おわりに
一〇 少数民族組織の活動にみる統制・公共圏・共同体のありよう
   ──パラウン(タアン)民族を事例に(生駒美樹)
一 はじめに――パラウン民族組織
二 研究背景
三 パラウン社会組織
四 パラウン茶業者組合
五 少数民族組織の活動にみる統制と公共性/公共圏のありよう
六 おわりに
一一 他者化された人々と公共的なるもの──カンボジア農村部のベトナム人の事例から(松井生子)
一 はじめに
二 調査地
三 差別と舞台裏の公共性
四 一般のクメール人との対話
五 政治空間への接合
六 おわりに
一二 シンガポールの多文化主義による「統制」と新たな空間の創出(田村慶子)
一 はじめに
二 多文化主義下での華語の「排除」とマレー系の「統制」
三 創造されない公共空間
四 「下からの」新たな空間創造の動き
五 おわりに
 あとがき(田村克己)
 索引