研究テーマ・トピックス|韓敏
1978年以降、中国の農村社会には大きな変化が起こった。経済改革によってもたされた注目すべき結果の一つは、父系親族集団である宗族の再興という現象である。
安徽省北部蕭県での現地調査を行い、600年にわたって地域化された李氏一族と彼らの一族の居住している李家楼村を対象とし、土地改革、社会主義集団化、社会主義市場経済体制の各歴史段階における宗族組織と姻戚関係の変化と持続と再構成を分析し、現代中国における宗族・姻戚関係の再興のメカニズムと意味を明らかにする。
300年前の先祖のお墓の前
1991年の4月5日の清明節に安徽省蕭県の北部に分布している李氏一族の男性たちが300年前の先祖のために、石碑を立て直した。
云南省騰沖県和順郷にある張氏祖廟の前に立つ現役の張氏宗族の理事長(族長)
社会主義革命以降、中国では否定されるようになったが、1980年以降、人民公社が解散されてから、中国各地で宗族単位の祖先祭祀や族譜の編纂などが目立つようになっている。その動きの中で、和順郷の人口の大半を占めている8つの宗族が、長年中止されている祖先祭祀を回復している。現在、和順郷にある5つの寺院と道観、8つの宗族宗祠が郷政府によって正式に和順郷の観光スポットに指定されている。また宗族の持っている族譜や伝記などは、和順郷だけではなく、騰沖、雲南ないし、中国西南部の移民歴史の研究に貴重な資料とされ、高く評価されている。
云南省騰沖県和順郷の農家の母屋
真ん中の「天地君親師」の位牌は、それぞれ天、地、君主、親と学校の先生を表す。民国が誕生してから、真ん中の字、「君」が「国」に変わったという。その右にあるのは、一家の運命を司る竈神の位牌であり、その左にあるのは一族の歴代先祖の位牌である。文化大革命の間に、隠されていたこれらの位牌は、現在、堂々と母屋の正面の壁に飾られている。現在、和順郷では、どの家の母屋もこのような三つの大きな位牌を奉られている。