国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究テーマ・トピックス|小長谷有紀

定住化過程におけるモンゴル族の牧畜経営

 
シリゴル市内の牧民宅
国際NGO諸団体が「貧困」とみなすゲル地区
馬に乗る
馬の経済的価値は低下している

中国内蒙古自治区では、社会主義の理念にもとづいた人民公社を解体した後、1980年代から家畜の私有化分配につづいて、土地の配分がはじまった。これによって、牧畜に携わる人びとは、自由に空間的に移動することができなくなった。と同時に、人びと自身が移動することに代わって、社会的な土地の移動すなわち土地の借用、土地利用権の貸し出しが比較的自由におこなわれるようになった。その結果、人びとの牧畜経営戦略が多様化している。


現在の定住化政策のもとで、移動の自由を失わざるをえなかった牧畜民は、都市化の波をとらえながら、新しい経営のための努力を続けている。


【参考文献】
  • 2003「中国内蒙古自治区におけるモンゴル族の季節移動の変遷 ─ 錫林浩特市域の事例から」塚田誠之編『民族の移動と文化の動態』pp.69-106 風響社(2003.3.24)
  • 2001「定住化過程におけるモンゴル族の牧畜経営-錫林浩特(シリンホト)市内の事例から」佐々木信彰編『現代中国の民族と経済』世界思想社 pp.185-207