国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究テーマ・トピックス|小長谷有紀

開発分野におけるNGOの果たす役割

 
国際NGO諸団体が「貧困」とみなすゲル地区
国際NGO諸団体が「貧困」とみなすゲル地区
国際NGO諸団体の指導による野菜づくり
国際NGO諸団体の指導による野菜づくり
NGOによる職業訓練コース
NGOによる職業訓練コース

モンゴル国における開発のための援助がおこなわれることによって、より一層、地方格差が拡大していることを鑑みて、NPO法人MoPI(モンゴルパートナーシップ研究所)を2001年6月に設立した。このような機関に積極的に席をおくことによって、純粋に学術的調査にとどまることなく、国際協力を果たそうとしている。


遊牧民が雪害対策を自力でおこなうことができるようになるためには、干し草などの物資を自分で購入するための資金をもつこと、すなわち購買力を得ることが必要である。そのためには、畜産物の販売ルートが確保されていなければならない。牧民を組織化して市場経済とつなぐ試みは、決して学術的な実験ではなく、彼らとの共同作業である。


このような開発の分野でNGOの果たしている役割は大きい。というよりむしろ、NGOのあり方によって、すなわちその理念や思想、具体的なプランの内容、運営方式など如何によって、モンゴル側が変わってしまう。相互の関係性のなかにこそ、実態がある。今日ではもはや、研究者が抽出したいような静止した客観的対象としてのモンゴル社会は存在しない、といってもよいほど、相互性のなかで激変しつつある。


【参考文献】
2003「朝青龍も参加する『黒板プロジェクト』はいかにして生まれ育ったか」『月刊国際開発ジャーナル 4月号(通巻557号)』pp.52-53 国際開発ジャーナル社(2003.4.1)