国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

花(1) ─ 伝統の花十種 ─

異文化を学ぶ


ビルマ(現国名ミャンマー)では、伝統工芸の名称の頭に「花」がつく。それらは「伝統の花十種」と呼ばれ、古都マンダレーにおいてはぐくまれ、今も伝承されている。その10の技能とは、(1)漆喰(しっくい)浮き彫り(2)石彫り(3)石工(4)青銅、銅、真鍮(しんちゅう)の鍛造工芸(5)絵画(6)木彫り、象牙細工(7)金銀細工(8)漆器工芸(9)ろくろ工芸(10)鍛冶(かじ) ─ である。

これらの伝統工芸によって生み出された品々は宮廷を飾り立て、そこで行われるさまざまな儀礼に用いられてきた。宮廷とその中心にある王は文化の頂点に立ち、それを具現するものとして人々に権威をもつ。そして、宮廷儀礼を模範として、各地の町や村で人々が行事を執り行う。「花」すなわち伝統工芸は、ビルマをはじめとする東南アジアの王権の本質にある。

国立民族学博物館 田村克己
毎日新聞夕刊(2007年4月4日)に掲載