国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

花(9) ─ 除虫菊─

異文化を学ぶ


雑穀畑の合間に、かれんな白い花が群生している。人口密集した農村だから、お金のために植えているはず。すぐにピンときた。ああ、これが除虫菊。 30年前、初めてケニア西部の高地を訪ねた時のことだ。花の子房に含まれるピレトリンが蚊取り線香の原料になる。かつて北海道や瀬戸内でも大量に栽培されていた。

ケニアの除虫菊生産量は1930年代、大躍進した。ピレトリン含有量は日本産のよりはるかに多い。日本で天然の殺虫成分が化合物に切り替わったのは50年代だが、それまで日本はケニア産除虫菊の最大の輸入国だった。

今でも、ケニアからは殺虫剤を抽出した除虫菊の残りかすが、蚊取り線香の風味、香りづけとして輸入されている。2本重ねの渦巻き型はケニアも同じだが、私は相変わらず日本製を買っていく。

国立民族学博物館 松園万亀雄
毎日新聞夕刊(2007年5月30日)に掲載