国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

創世神話(3) ─ビルマ建国神話─

異文化を学ぶ


東南アジアのビルマ(ミャンマー)は、敬虔(けいけん)な仏教徒が多数を占める国である。19世紀の半ばに英国の植民地となる前は、エーヤーワディ(イラワジ)河中流のマンダレーを都にして、王朝が栄えていた。

その当時、編纂(へんさん)された年代記の建国神話によれば、この国ははるか昔、インドの地で戦いに敗れたシャカ族の一部が、マンダレーの北のタガウンの地に移住してきたことに始まる。

彼らの王の死後、その二人の息子が王位を争うが、賢明な大臣の忠告に従って、戦ではなく徳をもって競うことにした。すなわち、大きな寄進小屋を一晩で建てる争いで、兄は頑丈な木や竹で試みるが、なかなか完成しなかった。弟の方はというと、小さな材料で骨組みを作り、その上に白い布をかぶせた。明け方にそれを見た兄は敗れたと思い、この地を去っていったという。

お釈迦(しゃか)さんの頃(ころ)の出来事と伝わるこの物語は、後世につくられたものであるが、ビルマの王が仏教を守るものとして、シャカ族の出自という血筋の上からも正統性を持つことを強く主張している。

現地語でビルマはバマーというが、これは、仏教経典で世界の最初の住民に対し用いられるヒンディー語のブラフマーに由来するとされている。そして、ミャンマーも、同じ語源からきているといわれる。

国立民族学博物館 田村克己
毎日新聞夕刊(2008年10月15日)に掲載