国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モノめずらしいくらし(1) ─ 乗り物 ─

異文化を学ぶ

古来、日本で用いられてきた乗り物は牛車や輿(こし)、駕籠(かご)である。平安時代に活躍した牛車は、移動のための機能性よりも、使用者の権威を示すことが求められ、重厚な造りや華やかな装飾性が優先された。初めて庶民が乗り物を自由に使える権利を得る江戸時代に発達した駕籠は、移動の迅速さを実現するための軽量化が図られた。これらのことから、乗り物の発達は、伝統的に使用者のニーズに合わせてきたといえる。

さて、さまざまな乗り物の恩恵にあずかっている私たちは、これから乗り物に何を求めていくのだろうか? 多くの人が利用する乗り物の安全性の向上は、当然、求めていかなければならない。また、自然環境への配慮も考慮し、その利用法についても再考していく時代になっているのだと考える。

国立民族学博物館 日高真吾

毎日新聞夕刊(2005年8月3日)に掲載