国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

便利?不便?(3) ─パソコンの中の言語─

異文化を学ぶ


国立民族学博物館(民博)では、世界各地の博物館スタッフのために毎年「博物館学集中コース」を開いている。数年前、この中のデータベース入門コースを担当したことがある。

生徒はエチオピアとザンビアからの研修生。日本に来てすぐに最低限の日本語トレーニングを受けてはいるのだが、やはり英語の方が通じやすい。そこで、使うパソコンを英語環境に設定しなおした。データベースソフトはもちろん、OSも英語版Windowsをインストールし、英語配列のキーボードをつないだ。データベースの解説書も英文のものを用意した。

英語環境に変えても、特別な設定なしに日本語のホームページをなんなく表示できたのは軽い驚きだった。と同時にふと昔を思いだした。わたしが民博に勤め始めた20数年前、民博では米国製の大型コンピューターやミニコンピューターが情報処理の主役だった。画面に表示されるメッセージは英語、コンピューターへの指示も英語風の略号を打ちこみ、ほとんどのマニュアルが英文だった。このころなら、何の特別な準備もせずに研修ができたのにと。いつの間にかコンピューターに日本語が浸みこみ、それをごく自然に使っている自分に改めて気がついた。

国立民族学博物館 山本泰則
毎日新聞夕刊(2008年12月17日)に掲載