国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

便利?不便?(5) ─韓国の親族呼称─

異文化を学ぶ


韓流ブームといわれ久しいが、韓国ドラマにはまって韓国語を勉強しはじめたという人も多いと聞く。韓国ドラマでは家族や親族の絆(きずな)がモチーフとなるものが多いが、韓国語の勉強のなかでやっかいなものの一つが親族呼称である。

兄姉の呼び方が、自分が男か女かによって異なる。男なら兄はヒョン、姉はヌナ。女なら兄はオッパ、姉はオンニと呼ぶ。オジ・オバの呼び方は、日本語では父方も母方も同じだが、韓国語では父の兄をクナボジ(大きいお父さん)、父の弟をチャグナボジ(小さいお父さん)と呼び、母方のオジはウェサムチョンとなる。オバも父方ならコモ、母方はイモになる。ここにそれぞれの配偶者が加わり姻族にまで広がると、さらに複雑になる。夫の弟が既婚ならソバンニム、未婚ならトリョンニムと呼ぶ。これを一つ一つ覚えるのは、とてもやっかいだ。

しかし、一度覚えてしまうと、長々とした説明がいらず便利である。日本語の字幕で韓国ドラマを見ていても、原語でコモ、イモなどと聞こえてくると、父方なのか母方なのかすぐに理解できる。便利なものにするためには、やっかいさ(不便さ)を乗り越える多少の努力が必要ということなのだろう。

国立民族学博物館 朝倉敏夫
毎日新聞夕刊(2009年1月7日)に掲載