嗣(つ)ぐ・承(つ)ぐ・継ぐ・接ぐ(1) ─受け継がれる旅の営み─
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西アフリカ最初の王国をつくったとされるソニンケ民族は、1000年以上前から多民族との交易を営んできた。人やモノの移動が盛んになったこの21世紀もなお、世界各地へ出かけて大陸間貿易にたずさわっている。
若いソニンケの男性は、ひと旗あげるために村を出る。兄よりも、父よりも、親類中の誰よりも成功するために、イスラームの教えを信じて地の果てまで出かけてゆく。最初は日銭を稼ぎ、それを元に商品を買い入れ、自分の労働を提供して資本金をため、たばこ1本の交換から商いを始める。そして、しだいにより多様で大量の商品を扱う商人になってゆく。父にお金を借りたのであれば、それ以上のものを返し、父親よりも金持ちになる。村に帰るのはそれからである。
家を継ぐのではない。むしろ家や社会への反骨精神ゆえにとび出して行く。何もないところから、何かを作りだすことが旅の目的である。人それぞれやり方は異なる。しかし誰もが、旅に出るという人生を選び、そのなかで人生と富をつくりあげる。そして帰ってくるときは、社会の規範のなかで尊敬される存在になっている。
移動するという行為そのものが、「受け継ぐ」という意義をもっているのである。
国立民族学博物館 三島禎子
若いソニンケの男性は、ひと旗あげるために村を出る。兄よりも、父よりも、親類中の誰よりも成功するために、イスラームの教えを信じて地の果てまで出かけてゆく。最初は日銭を稼ぎ、それを元に商品を買い入れ、自分の労働を提供して資本金をため、たばこ1本の交換から商いを始める。そして、しだいにより多様で大量の商品を扱う商人になってゆく。父にお金を借りたのであれば、それ以上のものを返し、父親よりも金持ちになる。村に帰るのはそれからである。
家を継ぐのではない。むしろ家や社会への反骨精神ゆえにとび出して行く。何もないところから、何かを作りだすことが旅の目的である。人それぞれやり方は異なる。しかし誰もが、旅に出るという人生を選び、そのなかで人生と富をつくりあげる。そして帰ってくるときは、社会の規範のなかで尊敬される存在になっている。
移動するという行為そのものが、「受け継ぐ」という意義をもっているのである。
国立民族学博物館 三島禎子
毎日新聞夕刊(2009年2月4日)に掲載