嗣(つ)ぐ・承(つ)ぐ・継ぐ・接ぐ(5) ─技芸の継承─
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スリランカにベラワーという、おもに儀礼、占星術などを執行するカーストがあり、宗教的な踊りと太鼓の技芸を伝えてきた。国家行事やホテルでの結婚式などに登場する華やかなキャンディアン・ダンスは、ベラワーが伝承してきた技芸を芸能化・観光化したものである。
ベラワーの技芸は、基本的に祖父から孫へ、家の芸として伝えられてきた。傍系の家系に生まれた子供はすぐれた師匠を頼って弟子入りし、一人前と認められるまで長い修業を積まなければならなかった。ベラワーが活躍する伝統的な儀礼は、夜8時ごろに始まって翌日の朝または昼までつづくのがふつうで、報酬も現金ではなく、食事をふるまうことですまされた。なかなかハードワークで、その儀礼の機会そのものもめっきり少なくなった。修行がきびしいこともあり、継承者がなかなか育たなくなっている。
そのかわり、ベラワーの技芸はスリランカが誇る伝統文化として学校教育にとりいれられた。特定のカーストが秘伝として継承してきた技芸が一般に普及した半面、ポップな踊りとなったキャンディアン・ダンスは、本来の豊穣(ほうじょう)祈願としての宗教的意義を失って、たんなる行事のにぎやかしになりはててしまっている。
国立民族学博物館 杉本良男
ベラワーの技芸は、基本的に祖父から孫へ、家の芸として伝えられてきた。傍系の家系に生まれた子供はすぐれた師匠を頼って弟子入りし、一人前と認められるまで長い修業を積まなければならなかった。ベラワーが活躍する伝統的な儀礼は、夜8時ごろに始まって翌日の朝または昼までつづくのがふつうで、報酬も現金ではなく、食事をふるまうことですまされた。なかなかハードワークで、その儀礼の機会そのものもめっきり少なくなった。修行がきびしいこともあり、継承者がなかなか育たなくなっている。
そのかわり、ベラワーの技芸はスリランカが誇る伝統文化として学校教育にとりいれられた。特定のカーストが秘伝として継承してきた技芸が一般に普及した半面、ポップな踊りとなったキャンディアン・ダンスは、本来の豊穣(ほうじょう)祈願としての宗教的意義を失って、たんなる行事のにぎやかしになりはててしまっている。
国立民族学博物館 杉本良男
毎日新聞夕刊(2009年3月11日)に掲載