国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モノめずらしいくらし(6) ─ 絵の具 ─

異文化を学ぶ

絵の具は、モノに色をつけるための材料。絵の具の主な成分は、色のもとになる顔料、その顔料を結びつける働きをする展色剤である。

昔の画家たちは自ら、顔料を卵、ニカワ、天然樹脂やゴム、乾性油と練り合わせて絵の具を作っていた。顔料を何で練り合わせるかでテンペラ絵の具、水彩絵の具、油絵の具など絵の具の種類が生まれてくる。20世紀になると、これらの天然の材料に加えて、合成の素材も画材として利用されるようになる。たとえばアクリル絵の具がそうだ。

現在、絵の具の大半は顔料と展色剤がすでに練り合わさった状態で市販されている。そう考えると、絵を描く人が、自分で顔料をニカワ水に溶きあわせて制作する日本画の手法は、絵の具の古典的伝統を今日まで継承している珍しい例といえるだろう。

国立民族学博物館 園田直子

毎日新聞夕刊(2005年9月7日)に掲載