国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

伝統芸能最前線(7) ─ 子どもと大人をつなぐもの ─

異文化を学ぶ


国立民族学博物館では16日から、「こどもとおとなをつなぐもの」をキーコンセプトにした特別展を開催する。今回の展示会では大人が子どもに贈るものを中心に展示資料を選んだ。

ところで、大人が子どもに贈るものは形あるものばかりではない。台湾の原住民族であるタオの人たちはトビウオ漁に用いる船の進水式に際し、悪霊を船から追い払う儀礼を行なう。大人の男性たちが全身の筋肉を緊張させ、目を見開き、悪霊を追い払う表現をするなかで、恥ずかしそうに大人たちの真似をする少年たちの姿がある。ところが、祭りの終わりにもなると、少年も大人顔負けの迫力で、自分の役割を演じるようになる。大人から子どもへ託した思いが伝わったことを知ることのできる瞬間がそこにある。

国立民族学博物館 野林厚志

毎日新聞夕刊(2006年3月15日)に掲載