国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

働くということ(3) ─ 高度成長へのまなざし ─

異文化を学ぶ


7年前、ベトナム北部の少数民族村落に戻るとき、ハノイで大人気の『ドラえもん』を3冊持って行った。子どもたちの反応はさっぱりわからない、おもしろくない、と実に冷ややか。

きっと高度経済成長期の日本の都市近郊サラリーマン家庭の日常と、電気も水道もガスも知らない自給的農村の日常とではギャップが大きすぎたからだろう。村の子どもたちは学校以外に、子守り、水くみ、薪(まき)取り、家畜の世話、水路での採集など生きることに直結した活動に忙しかった。

発展の象徴である電気が来て3年、村の生活も現金がなくては成り立たなくなった。当時の子どもたちも家族と離れ建築出稼ぎにでてゆきつつある。町でかれらは空き地の消滅をどんな目で見つめているのだろう。

国立民族学博物館 樫永真佐夫

毎日新聞夕刊(2006年6月21日)に掲載