国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

色(7) ─ 白 ─

異文化を学ぶ

民博の「日本の祭りと芸能」の展示場はカラフルだ。ハレの空間を意図したから当然なのだが、予想以上に華やか。金襴緞子(きんらんどんす)の織物のように、それ自体が色鮮やかであるうえに、五色(青・赤・白・黒・黄)が祭礼のつくりものに多用されている。黒地の展示壁面に白の御幣や紙垂(しで)も映えている。

白は、柳田國男が説いたように、日常生活では禁色(きんじき)だった。ハレの色で、ケ(日常)では避けられた。普段着は「曇ったる色を愛して、常の日の安息を期して居た」のである。

白い服装はワイシャツをはじめ、今では日常化した。白を避けることは過去の“異文化”となった。しかし、白むくの花嫁衣裳や行者の白装束にハレの意識を感じとる感覚も残っている。白は、ハレのなかで映える、意外な色である。

国立民族学博物館 中牧弘允
毎日新聞夕刊(2006年11月15日)に掲載

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