国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

成長と試練(4) ─ 掛川祭り ─

異文化を学ぶ


静岡県の掛川祭りでは、全41町内をまとめるのも、各町内を先導するのも、すべて「青年」と呼ばれる満35歳以下の年齢層から選ばれた役員の仕事である。

各町内が屋台車や獅子をひきまわして練り歩く時、彼らの力が試される。他の町内にさしかかれば会所にあいさつに出向き、交差点で他町の一行と出会うと、通行順の折衝に当たる。礼儀作法にのっとり、交渉事をうまくさばければよいが、もたつきや不作法な振る舞いが出れば、大恥をかく。他の町とのこれらの行為は「外交」と呼ばれ、町内の誇りと責任を背負って青年役員だけが外交権を掌握する。家族や近所の知り合いもいれば観光客もいて、長老や子どもたちまで注視する「外交」の晴れ舞台は、人として成長をとげる、真剣勝負の学びの場になっている。

国立民族学博物館 横山廣子
毎日新聞夕刊(2007年2月28日)に掲載