いま民博で「千家十職×みんぱく:茶の湯のものづくりと世界のわざ」が開催されている(6月2日まで)。
民博の展示場は、主に民族や文化の理解のため、また学習のために構成されている。展示されている資料は、約1万点である。しかし研究のために集めた民族資料は26万点にもおよぶ。
それを研究のためだけに使うのではもったいない。出番がないまま、収蔵庫に眠っている資料を目覚めさせ、創造の刺激材としたい。そして、生まれた作品と刺激を与えたもとの民族資料を併置させたい。そんなこれまでにない展覧会をしようという思いを受けとめてくれたのは、長年、茶道具を作ってきた千家十職の 方々であった。
彼らは、千利休以来、世界の珍しいものを茶の湯に取り入れて、諸民族が作るものにひとかたならぬ興味を抱いてきた人たちである。
彼らが選んだ資料には、見た目に美しいと思えないものがたくさんあった。西洋中心の美の基準に慣らされてきた常識的な美ではくくれない、魂を動かす根源美といってもよいものであった。美を問い直し、創造の源泉となる。そんな民博の利用もありえよう。
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