1995年の夏休み、韓国のある大学で100名以上の学生の一団に出くわした。大荷物で何台ものバスに分乗していく。その光景に圧倒されていたら、友人が「農活に行くんだよ」と教えてくれた。
農活(農村活動)とは、数日から数週間、農家の仕事を手伝う団体活動のこと。農村の人手不足を補いながら、労働の意義を学び、階級を越えた連帯を実践しようという趣旨である。学生運動が盛んだった90年代半ばまで、農活は韓国の学生の夏の定番だった。
あれから韓国社会は急速に変化した。今では学生の農活も時代遅れにさえ感じられる。代わりに学生が「大学時代に一夏は」と心づもりするのが、バックパッカー、つまり海外への貧乏旅行である。「ずいぶん自分本位に転じたな」「結構な御身分だ」と眉(まゆ)をひそめる大人もいる。それに対して学生側の言い分は、しばしば「みんな行くから」と、パッとしない。だが、それなりの大義を主張する学生も多くいる。「見識を広めたい」「独りで苦労してみることも必要」などだ。
確かに韓国の学生は変わった。ただ、集団主義を好む点や、自らの行為の社会的意義を堂々と主張する者が多い点など、今と昔が一脈つうじているところもあるのではないだろうか。
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