国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

涼を飲む

(7)冷たいイコールすずしい?  2009年9月16日刊行
笹原亮二(研究戦略センター教授)

沖縄中部の民家

「暑い」といえば沖縄の話を持ち出すのも何とも紋切り型で心苦しいが、涼しい飲み物と聞いて私がまず思いつくのは、以前沖縄のあるお宅でいただいたお茶である。

確かそれは、よく晴れた暑い日、周囲に畑が広がる集落の昔風の造りの家で、縁側でいただいたお茶だった。冷蔵庫や氷でキンキンに冷やしたのではなく、普通に入れたお茶である。いただいていると、次第に冷めてぬるくなるが、ジャスミンの香りが付いた「さんぴん茶」は渋みが目立たず、それもまたおいしい。風がよく通る日陰の縁側で、炎天下、そこに来るまでに大汗をかいて渇いたのどをお茶で潤すのは、その時の私にとっては本当に涼しく快適な一ときだった。

こうした私の体験は、涼しい飲み物とは、必ずしも冷たい飲み物を意味するわけではないことを改めて気付かせてくれる。このところ、省電力のエアコンなどの新技術で効率的に冷やすことで、快適さを我慢せずにいかに涼しくエコに暮らすかという議論をよく耳にする。確かにそれも一つの行き方だろうが、冷やすこと、冷たいことのみが涼しいことではないと発想を変えてみることも、エコの行き方としてまだまだ見捨てたものではない。そんなふうにも思えてくるのである。

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