人口約12億の漢族の共通点は婚葬の基本パターンに見られる。葬儀の楽隊使用はその具体例の一つである。
漢族葬儀の楽隊は2~8人から成り、チャルメラ、シンバル、笙(しょう)、二胡などを演奏する。楽隊は通常葬儀の前日に喪主の家の前で演奏し、葬儀のはじまりを周囲に知らせ、翌日の葬儀の終了まで休みを入れながら演奏しつづける。
弔問客は大体午前中につく。まず香典を出し、棺(ひつぎ)の前で3回の礼拝を済ませ、昼の会食と午後3~4時の出棺を待つ。
出棺までの長い待ち時間に楽隊は伝統的民謡、地方劇、現代の流行曲などを演奏し、にぎやかな雰囲気を作る。
軽やかな楽曲がだんだん厳かな楽曲へとかわり、人々に出棺を知らせる。出棺の前に故人に酒、豚などが供えられ、鎮魂のための伝統的な葬儀音楽が演奏される。喪主が素焼きの鉢を地面に叩(たた)きつけて割って出棺のシグナルを出すと、遺族や弔問客が一斉に泣き、楽隊は悲しみのクライマックスを演出する。
時に悲しく、また時にはくつろぎを感じさせるような軽快でにぎやかな音楽は、葬儀にかかせない故人への鎮魂であり、弔問客へのもてなしでもある。
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