旅・いろいろ地球人
ずらりと並べる
- (5)考現学的な展示 2012年6月7日刊行
-
久保正敏(国立民族学博物館教授)
国立民族学博物館のお面の展示=大阪府吹田市で、筆者撮影文化を理解する方法には、つらぬく論理とつらねる論理がある、と梅棹忠夫は述べた。前者は多様な文化をつらぬく共通論理を探る分析的方法、後者は多様ななりに全体を説明できる論理を探る総合的方法だ。私から見れば、多様な事物をつらね、それを並べ替える中から、つらぬく論理を複数見出したいからこそ、古来、人は事物を集め、並べ、比較検討してきたと思う。
収集家の根源的な熱意は、ある種類やテーマに沿って残らず事物を集めるところにある。次の段階は分類、「分かる」は「分ける」に由来すると言われる如(ごと)く分類は理解の第一歩だが、分類はむしろそれ以上の理解を縛ってしまうし、事物を並べ替えれば新たな発見がある、とは、また梅棹の言葉だ。虚心坦懐(きょしんたんかい)に集めた事物をまず並べてみること、このディレッタント(好事家、趣味人)の精神は、博物学、そして博物館の根本だ。
民博の資料整理においても、分類しないという理念が継承されているし、展示でも資料を並べたコーナーは数多く、今和次郎(こんわじろう)の一切しらべに通じる考現学的スポットと言えよう。
しかるに、すべての事物を残らず集めるのは人智を超える所業、一切しらべは、人類の見果てぬ夢かも知れぬ。
シリーズの他のコラムを読む