旅・いろいろ地球人
冬を楽しむ
- (1)究極の入浴法 2013年12月12日刊行
-
庄司博史(国立民族学博物館教授)
氷点下20度での水泳=フィンランド、トゥースラ市で2011年2月、筆者撮影以前フィンランドに住んでいたと言うと、「あんな寒い国だと、どんな格好で外に出るんですか?」とよく尋ねられる。首都ヘルシンキも時折氷点下25度にはなる。いくら防寒着を着込んでも、しばらくすると耳や指先が痛さでしびれる。地元の人も普段はなるべく外にいる時間を少なくし、あったかい屋内で過ごそうとする。
とはいえ、スポーツや余暇となれば話は別。いくら寒くても子供たちは公園のスケート場で転げ回る。少し郊外なら、積雪した畑を一人黙々と徒歩スキーする人もありふれている。街中でも、軽いジョギング感覚で外へ出て小一時間ひたすら歩いて戻ったり。雪を踏みしめるのが爽快なのか、冷気が心地いいのか。刺激的な寒さを楽しんでいるとしか思えない。
その究極が氷穴水泳だ。サウナのあと湖へ飛び込む風景は日本でも知られているが、これを真冬、岸辺にあけた氷穴でやる。ある友人夫妻は週末、湖畔のサウナでほてった体を氷水に10秒ほどつけてはサウナに戻る、を2、3回繰り返す。変人でもアスリートでもない二人が、これなしでは冬を体感した気にならないとか。日本では屋内でも凍える私には、どうしても共感できないことの一つである。
シリーズの他のコラムを読む
- (1)究極の入浴法 庄司博史
- (2)蜂蜜売りが来るころ 横山廣子
- (3)掘っ立て小屋のぬくもり 池谷和信
- (4)2年に1度の「使者祭」 岸上伸啓
- (5)カワカマスの穴釣り 佐々木史郎
- (6)香をたきしめて 三島禎子
- (7)キムジャンの心 朝倉敏夫
- (8)小正月の火祭り 須藤健一