国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

冬を楽しむ

(6)香をたきしめて  2014年1月23日刊行
三島禎子(国立民族学博物館准教授)

貫頭衣を着ておしゃれをした少女たち=セネガルで1997年、筆者撮影

セネガルは北緯14度に位置するアフリカ大陸最西端の国である。サハラ砂漠の南端のこの地域には、日本のような四季はなく、季節は乾季と雨季に分かれている。6月から10月に比較的雨が多く、それ以外の時期には一滴の雨も降らない。首都ダカールでは、年間を通じて最高気温が25度から30度くらいで、乾季になると最低気温が20度を切るようになる。

この比較的涼しい時期になると、生活の場は中庭や屋上から、室内へと移ってくる。そして「寒さ」には欠かせないものが登場する。

もっともセネガルでは暖を取るというような習慣はないのだが、炭をおこして香をたくのがしゃれているとされる。部屋を閉め切って、煙で真っ白になるまで香をたきしめる。すると衣服や寝具に香りが染み込む。ブーブーと呼ばれる大きな貫頭衣(かんとうい)を着たときに、この香りがするのが好まれるのである。出かける前に、ブーブーの裾から香の煙を取り込むこともある。

香の習慣はアラブ世界と共通するものだが、香として高級で貴重品とされる「乳香」が採れる樹木がセネガル周辺には自生していないため、さまざまな樹木の根や枝などを発酵させて独特の香を作る。「冬」の風物詩である。

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