旅・いろいろ地球人
冬を楽しむ
- (8)小正月の火祭り 2014年2月6日刊行
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須藤健一(国立民族学博物館長)
少子化が進み、とうどやさんはもっぱら大人たちの楽しみに=新潟県佐渡市で2006年1月、伊藤義秋さん撮影寒い冬の楽しみは小正月の「とうどやさん」だった。1月15日ころに日本各地で行われる「どんど」、「とんど焼き」、「左義長」などと同系の火祭りである。
私の田舎、佐渡では1月13日、道路の三差路で青竹を柱にしたわらぶきの小屋を建てる。間口2メートル、奥行3メートル、高さ2メートルほどの小屋だ。学校帰りの子供たちは、そこでトランプをしたり、おやつを食べるのが楽しみ。
子供たちは「とうどの鳥のわたらぬ先に――」と歌いながら家々を回る。お小遣いをもらい、文房具などを買うためである。夕方には、世話番の家に集まってきな粉のおにぎりをごちそうになる。
小屋は15日に焼く。夕方、子供たちが書き初めを持ち寄る。母親たちは娘のために色紙でつくった美しい袋を小屋にかける。父親たちはお飾り、しめ縄や門松などを集める。その小屋に火をつけると青竹がはじける音とともに炎が上がる。投げ入れた書き初めが高く舞うと習字が上達すると喜ばれる。小屋の焼けあとで餅を焼いて食べる。
とうどやさんは子供の成長を願い、健康や家内安全、作物の豊作を祈る火祭りといえよう。雪のなかでの楽しいひと時である。
民俗学では、門松やしめ縄でお迎えした歳神(としがみ)をそれらを燃やした炎で見送る行事であるとされている。
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