旅・いろいろ地球人
共に生きる
- (7)鶏ともつながる 2014年5月22日刊行
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南真木人(国立民族学博物館准教授)
結いで堆肥を運ぶ女性たち=ネパール・ボジャ村で今年3月、筆者撮影ネパールの村は、今、青年男性のほとんどが中東湾岸諸国などに働きに出ていて人手不足が深刻だ。残された女性たちは農作業を順に手伝いあう「結い」を作って、協同作業でなんとか生活を切り盛りしている。結いはグループ内の等価労働交換なので、お礼や食事を提供しなくてよい。それでも結いを招集した家は普通、休憩のときにトウモロコシや米を醸したドブロクをふるまって労をねぎらう。
3月に見た堆肥(たいひ)運びの結いには女性11人と男性2人が参加し、出されたドブロクは格別に美味(うま)かった。だが、アルコール度数も高かったのだろう。少量で女性たちはみなほろ酔い加減になり、休憩後の作業はへらへらと笑いが絶えなかった。すっかり酩酊(めいてい)した私はその夜、夕食も食べずに就寝したが、結いに参加した隣家のお嫁さんも酔って寝床で吐いたらしい。男性の一人などは夜中に転んだそうで、額から血を流していた。
翌日、結いを招集した家を訪ねると、珍しいことに朝から鶏を調理している。当のドブロクの滓(かす)を食べた鶏がふらふらになったので、食べることにしたのだそうだ。みなで働き、みなで分かち合う人のつながりが、巡り巡って鶏ともつながる。循環型社会ネパールの村ならではの情景である。
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