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- (1)サバンナの牛と先住民 2014年7月31日刊行
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齋藤晃(国立民族学博物館教授)
雨期に水没したサバンナを避けて村に集められた牛=ボリビア・モホス1995年2月筆者撮影わたしの調査地である南米ボリビア熱帯低地のモホス地方では、牛の放牧が盛んである。広大なサバンナに牧場が点在しており、食肉が高地の都市に空輸される。臓物は地元で消費され、おかげでモホスに滞在するときは、肝臓や腎臓、胃や腸、乳房や腱(けん)を毎日のように振る舞われる。
モホスの牛は17世紀末、イエズス会によりもたらされた。もともとサバンナの先住民は狩猟や漁労、焼き畑農耕を生業とし、半移動生活を送っていた。その彼らを西洋式の町に定住させるため、イエズス会は安定した食糧源として牛を導入したのである。
しかし現在、牛を所有する先住民はまれで、その肉が彼らの食卓にのぼることはまずない。19世紀以降にモホスに移住してきた非先住民が牛を独占し、畜産業を牛耳るようになったためである。先住民のたんぱく源は川魚と狩りの獲物に逆戻りしてしまった。
もっとも、いまでもごくまれに、先住民が牛の肉をたらふく食べられる機会がある。モホスでは、食肉の空輸に大戦後米国から払い下げられた旧軍用機が使われるが、エンジントラブルが絶えない。サバンナに不時着した場合、機体に積まれた大量の食肉は、賞味期限が切れる前に周辺の先住民がありがたく頂戴するそうである。
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