国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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(8)ペピアンとホコン  2014年9月18日刊行
八杉佳穂(国立民族学博物館教授)

器に盛られたペピアン=グアテマラ・チマルテナンゴで2012年8月、筆者撮影

中米グアテマラの首都、グアテマラ市周辺の典型的な料理といえば、ペピアンとホコンであろう。レストランのメニューにあるし、インディヘナ(先住民)の家庭に招かれても、そのどちらかが出ることが多い。ペピアンのほうが手が込んだ料理だが、どちらも鶏の肉やジャガイモ、トマト、香辛料などが入ったシチューのような、カレーのような料理である。ペピアンはカレーのような色をしているが、ホコンは緑色である。

ペピアンはスペイン語から派生した語らしく思えるが、ホコンは何となくスペイン語らしくない。あるときカクチケル語(先住民の言語)の本を見ていたら、ホコンという言葉が出てきて、すり潰したという意味であることを知った。おそらくこの言葉に由来するに違いない。いろいろな材料をすり潰してできた料理の名にぴったりである。

それに加えて、カクチケル語は首都グアテマラ、旧都アンティグアの周辺で話されている言葉である。だからカクチケル語の語彙(ごい)がスペイン語に入っても不思議ではない。しかし本当にそうだろうか。何の証拠もないことを、あれこれ考えながら、ホコンとともにトウモロコシの団子タマリートをほおばる。ああグアテマラに来ているという感じがするひとときである。

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